高校から看護学校に進み、一度は看護師になったオカリナさん。3年間働いたのちに、NSCの門をたたき、芸人の道を歩み始めます。「おもしろいことが正義」と語る芸人の価値観や最近話題になっているYouTubeの活動など、芸人・オカリナさんの本音に迫ります(全3回中の2回)。

看護師の先生は当時から私を見抜いていた

── オカリナさんは、看護師から芸人に路線変更されました。安定した職業から、少々不安定な職業に移ることについて、どう思いましたか?

 

オカリナさん:まぁ、どうなるかわからないけど、そのうち売れるかなって。あんまり深く考えてなかったですね。たぶん、NSC(吉本芸能総合学院)に入ってくる人は、みんなそんな感じでやって来るんでしょうけど。

 

── 芸人として活躍するまで、看護師の資格があったことも強みですか?

 

オカリナさん:後ろ盾があったことは大きいですね。看護師の派遣会社に登録していたので、芸人の仕事がない日は、健康診断とか訪問入浴の現場に行ってましたよ。カルテとか記録も書いたりして。

 

── 看護師と芸人を経験されている方は少ないですが、共通点はありますか?

 

オカリナさん:私は違うんですけど、両方とも人が好きな人が多いイメージはあります。相方のゆいPもそう。人を笑わせたいとか、サービス精神が旺盛な人が多いですね。

オカリナ
廃校にできた吉本興業社屋の校庭でダイナミックな動きを見せてくれたオカリナさん

── オカリナさんは、違うと?

 

オカリナさん:私は、あんまり人が好きじゃないというか。自分の好きな人しか関心がないような。

 

実は、看護学校時代に先生から「看護師に向いてない」って言われたことがあるんです。「人の気持ちがわかってない」って。マイペースすぎるんですかね。

 

それに、人から「普通はこうでしょ」って説明されても、「普通って何?」ってどんどん聞いちゃって、さらに相手をイラつかせてしまうとか。

 

確かに、先生に「向いてない」って指摘されたときは、「なんてこと言うんだろう…!」って思いましたよ。でも、いざ病院で働いてみると、人とのコミュニケーションの取り方や奉仕の気持ち、仕事の熱量に対しても、自分自身で疑問を持ったし。そう考えると、当時から先生は私の気持ちを見抜いてたんだと思います。

芸人は「おもしろい」が正義という価値観?

オカリナ
今から踊ります!

── 看護師から芸人になっていかがですか?

 

オカリナさん:すごく良かったですね…!看護師時代は、ミスが許されない場面も多かったけど、芸人は、ネタで滑っても死なないじゃないですか。それに、芸人はダメなところも受け入れてくれる。ダメなところも、いいところとして笑ってくれるのは、良い社会だなって思いますね。いろいろな現場に行けるし、毎日ずっと同じ人と会わないのも新鮮です。

 

── オカリナさんには合っていたと。

 

オカリナさん:ホント、そう思います。ただ、芸人は「おもしろいが正義」なんですよ。おもしろくないと価値がない、とまで言わないけど。そこはハッキリしてますね。

 

オカリナ
全身で舞います!

── 今は、いわゆる「芸人をイジる」ことにしても、昔と比べて世の中の認識が変わってきていますよね。

 

オカリナさん:芸人としては、少々複雑ではあるんですけど…。自分で何か話すより、イジられたほうがラクじゃないですか。私は、仕事でイジられるぶんには何とも思わないんですけど、世の中的に、今はダメだし。

 

もちろん、傷つく人がいたら配慮すべきなのかなって思うんですよ。一方で、芸は芸、自分は自分、って分けてもらえたらいいけど…それもなかなかね。ただ、私は言葉でボケて、笑いをとるタイプでもないので、たまに戸惑いも感じるときはありますね。

 

── ここ数年、芸人さんの方向性も変化しつつあるのでしょうか。以前に比べたら、女性芸人も増えてきましたね。

 

オカリナさん:前は控室がなくて、トイレで着替えることもありましたから。

 

ただ、今でもめちゃくちゃ男性社会だと思いますよ。M-1グランプリを見ても上位にいるのは、ほとんど男性だし。実際すごくおもしろいですから。でも、そこで抗うでもなく。

 

まぁ、自分たちは自分たちでおもしろいことをやっていけたらいいなって思います。やっぱり現場にいると楽しいし、まだまだやれることはあるんじゃないかなって。