ここ10年ほどの間で一人っ子の割合は増え続け、2021年の調査ではおよそ5人に1人(約19.7%)が一人っ子ですが、それでも半数以上(50.8%)は2人きょうだい、3人きょうだいも18.6%と、子供のいる家庭の約7割に達しています。一方で、消費税や学費、都市部を中心に住居費も上がり続け、給与水準だけが数十年間上がらないなかで、子供たち一人ひとりに個室を用意できない家庭も少なくありません。

 

しかし、子供たちの性別が異なったり、年齢が上がってくれば、家の中でもそれぞれのプライバシーが守れる環境が必要。子供部屋や個室がないという問題を、世の中のママやパパはどのようにクリアしていったのでしょうか。

 

20歳までの複数のお子さんがいる男女50人を対象に実施したアンケートの回答から、ヒントになりそうな方法を子供の年代別に紹介します。

小学校低学年~中学年の子供部屋はなくても大丈夫?

国立青少年教育振興機構が実施している「青少年の体験活動等に関する意識調査(令和元年度)」によると、小学校1年生の時点で「自分だけの部屋がある」という子は21.0%と少数派。

 

2年生で25.9%、3年生で30.7%と少しずつ増えていきますが、4年生でもまだ35.1%と全体の3分の1程度です。

 

小学校3年生と1年生の2人のお子さんがいるKさんは、長子の小学校入学に合わせて家を新築し、子供部屋を用意したそうです。

 

「でも、当時は全然使わなかったですよ!寝るときも4人で下の親の部屋でしたし、宿題は学童保育で済ませてきたので、週末にお友達が来たときの遊び場所になるくらいでした」

 

子供部屋の用途はおもに勉強(宿題)、寝室、遊び場所となりますが、この年代までは宿題の量も多くないので、リビングでやってしまう子も多いようです。

小学校高学年になると、個人のスペースが必要

上記の調査では、小学校5年生で39.0%、6年生では47.5%と、個室を持つ子が半数に近づいてきます。

 

思春期には精神的にも身体的にもパーソナルスペース(個人の領域)ができてくるのが自然であり、そこに入れるのは仲のいい友達であって親ではなくなってきます。

 

たとえ家族でも、子供が1人で安心して着替えたり趣味に集中したりできる空間を用意してあげたいもの。

 

当時小学5年生と2年生の姉妹を育てていたSさんは、

 

「小さいときは2人で8畳の部屋に二段ベッドを置いて使っていたのですが、お姉ちゃんがだんだん大人っぽくなってきて。お友達が来たとき、妹を入れて遊ぶこともあるのですが、恋バナになると妹にも話を聞かれたくないんですよね(笑)。寝る時間も違ってきたので、親が8畳に移り、元親の部屋と、物置にしていた部屋をそれぞれ娘達の個室にしました」

 

と話します。

 

住宅事情から1部屋ずつは難しい場合でも、間仕切りや、デスクと本棚が両側から使えるシステム家具などを利用して、1人になれる環境を用意してあげたいですね。

中学生・高校生に成長後、リフォームする家庭も

上記の調査では、中学校では66.6%、高校生は76.6%と、個室がある子が大多数になります。

 

逆にいうと20~30%は高校まできょうだいと同室ということになりますが、高校生・中学生・小学生3人のお子さんで2部屋を使っていたというTさんは、こんな風に対処していたといいます。

 

「小さい頃は、1つの部屋は寝室に、1つは学習机を3台並べて勉強部屋にしていました。長男、次男がそれぞれ受験の年になったら個室として使い、あとの2人で1部屋を使ってもらっていました。長男が大学卒業後は家を出るので、そこからは下の2人が一部屋ずつ使うことになりますね」

 

男の子と女の子のきょうだいを育てるSさんは、お子さんが小さい頃に購入した中古の一戸建てをリフォームしたといいます。

 

「ちょうど上の子が中学生になる頃に家の老朽化が目立つようになったため、リフォームしてリビングを小さくし、リビング横の畳の小上がりをなくし、個室を1部屋増やしました」

おわりに

お子さんが小さくまだ何人きょうだいになるか定まっていない人や、転勤族、自宅購入までの賃貸住まいの人など、子供部屋や個室をどうするか迷っている人もいるかと思います。

 

かつて昭和の時代には「子供に個室を与えると孤立して非行の原因になる」という「子供部屋論争」が巻き起こったことからも、個室があると家族がコミュニケーション不足になるのでは…と心配な人もいるかもしれません。

 

しかし過去の調査では、親子のコミュニケーションには、子供部屋や個室の有無そのものよりも、日頃のちょっとした声がけなどができているかどうかが重要ということが分かっています。

 

部屋数などの住宅事情はありますが、間仕切りや家具などもじょうずに利用して、できるだけ適切な時期に子供がリラックスして1人で過ごせる場所を作ってあげたいですね。

文/高谷みえこ

参考/国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する意識調査(令和元年度調査)」 https://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/154/File/03-1.seisyounen.pdf

国立社会保障・人口問題研究所「2021 年社会保障・人口問題基本調査 <結婚と出産に関する全国調査>第 16 回出生動向基本調査結果の概要」 https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/JNFS16gaiyo.pdf