「こんな夜中にミルク」わかっていたはずの育児の現実
産後から行った治療によって、木村さんの妻はいまでは日常生活を送れるまでに回復しました。それまでは木村さんが家事・育児の全般を担っていたそうです。
「育児のことは知識として理解していたんですよ。でも、本当にお腹が空いて3時間おきに赤ちゃんが泣くので。毎晩のミルクとオムツ交換で睡眠不足に。
育児は24時間体制じゃないですか。普通の仕事だったら労働基準法違反ですよ(笑)。
赤ちゃんはこちらの都合もお構いなしに泣いて呼び出してくるので、まるでブラック企業の上司みたいだなと思ったこともありました」
生後1か月間つけていた育児記録には、昼夜問わず毎日7〜8回の授乳、オムツ替え、沐浴など事細かに記されています。
これらの数だけ、赤ちゃんとの絆が深まっているんだと思うと感慨深い、と木村さんはいいます。
「誰しも生まれたときはこんなに無力で、誰かに大切に守られて成長してきたのだと改めて気づきました。繰り返される命の連鎖に、尊さを感じます」
産後1か月を機に、実家から徒歩3分の首都圏に引っ越した木村さん。月齢4か月から保育園が決まり、現在は職場復帰に向けて準備中だそうです。
「育休期間の延長もさせてもらい、希望通りの期間を取得することができました。今回で、男性社員の育休取得の実績もでき、あとが続きやすくなったら嬉しいです。
けれど、育児休業が終わってしまうと、子どもと一緒にいられる時間が減るのが正直悲しいです。職場復帰後も育休の経験を活かして、しっかりと育児に参加していきたいです」
PROFILE 木村真吾さん
大学で生物学を専攻し、現在は培養肉などの研究開発を行うベンチャー企業の研究員。博士(生命科学)。専門分野は遺伝学、脳神経科学、バイオインフォマティクスなど
取材・文/清宮あやこ 写真提供/木村真吾