入り口をたくさん用意することで敷地に来る人が増えた

── コインランドリーが併設されているだけでなく、美容室の2階がカフェになっているとお聞きしました。

 

濱田さん:
そうなんです。こちらも大きな特徴のひとつなのですが、美容室、コインランドリー、カフェと別々な場所でそれぞれに経営しているのではなく、実際に美容室の中にコインランドリーがあり、カフェが併設されているというのは、世界でうちしかありません。

 

ヘアカットする濱田さん

美容室の2階に併設されているカフェや、そこで行われているイベントがきっかけでコインランドリーや美容室を使い始めてくれた方もいますし、コインランドリーや美容室をきっかけにカフェを使う人がいるなど入り口はいろいろですが、この敷地に来る人が全体的に増えているのは嬉しいです。

どういう人たちのそばにいるお店であり、人であるか

── 濱田さんが考える地域のヘアサロンの役割を教えてください。

 

濱田さん:
僕は、今日生まれた赤ちゃんから明日亡くなるおじいちゃん、おばあちゃんまで髪を切っています。子どもを連れてきたお母さん、お父さんも一緒にカットするし、おじいちゃん、おばあちゃんもお店に入れるようにバリアフリーにし、車椅子でも入れるようにしています。

 

僕の代からは仕事の帰りが遅い方や、部活や塾で忙しい学生さんのために夜の営業も始めました。

 

お店に来てくれるお客様のほかにも、緩和ケア病棟という生命を脅かすような疾患に直面しているような方が入る施設にも依頼を受けて髪を切りに行きますし、事情があって親御さんと暮らせない子どもが過ごす施設へはもう50年近くヘアカットのボランティアとして訪問し続けています。

 

洗濯を利用している人の様子

自分やお店の都合じゃなくて、この地域で必要とされるお客様の年齢や状況、必要とされている時間帯にカットしてあげられるか。そういうところを地域のヘアサロンの役割として忘れないようにしたいです。

 

トレンドの髪型を追いかけることも可能性だと思いますが、広まってしまうと結局トレンドはいつか終わってしまう。それよりも、自分たちは、どういう人たちのそばにいるお店であり人であるかと考えることが大事で、それこそが地域のヘアサロンの役割であり可能性だと思っています。それを続けていけば、うちはいつまでも美容室ができると思います。

 

── 最後に、今後の展望を教えてください。

 

濱田さん:
今やっていることを続けることです。本当にシンプルに美容室であり続けること。僕の父も美容師でもう80歳近いんですが、先日入院しまして、でも退院して1週間後にはもう店に立ってカットしてるんです。お客さんにも「大丈夫か?」と言われながら働いています(笑)。でも、そういう職業なんです。

 

新しいことをやっているという印象もあると思うのですが、大事なのはずっと続けていくことだと思います。

 

 

「自分たちは、どういう人たちのそばにいるお店であり、人であるか」という言葉が印象的でした。ヘアサロン、ランドリー、そしてカフェに通うお客様の笑顔が見えてくるようなインタビューでした。

 

取材・文/渡部直子 写真提供/濱田健太さん