養護学校勤務からちぎり絵作家に転身したウメチギリさん。それから20年間作品作りに没頭し、本の出版やNHKの講師を務めるまでに。「ちぎり絵には上手も下手もない、紙とのりがあれば誰でも始められます」。そんなちぎり絵の魅力や作品に込める思いを伺いました。

 

企画展に参加した際のプリンアラモードのちぎり絵

「瞑想に近い感覚も」ちぎり絵はこころを落ち着かせる

── 長年続けてこられたちぎり絵。その魅力は、どんなところにあるのでしょうか。

 

ウメチギリさん:
紙をちぎっている時間が何より楽しいんです。とくに私は和紙が好き。ふんわりとした柔らかな繊維の質感に癒やされます。

 

ちぎっているときの「ざりっざりっ」という音も何ともいえず心地良くて。瞑想や気持ちを“整える”といった感じに近いのかもしれません。

 

紙を「ちぎる」という言葉からは、「ひきちぎる」「ちぎりとる」などのように、力強いイメージが連想されるかもしれません。でも、私のなかでは紙の繊維を「ほどく」感覚なんです。

 

ちぎり絵になると、たゆたうくらげが愛おしい感じに

──「ほどく」というのは新鮮です。

 

ウメチギリさん:
うまく言葉にするのが難しいのですが、紙の繊維に任せて優しくほどいていくと、自然な形に整っていくんです。

 

心がイライラしたり焦ったりしているときは、繊維を無視してムリヤリ「ぎっぎっ」とちぎるので、なんだか乱れた違和感のある形になるんです。

 

── 紙が本来持っている、繊維の流れを活かすということですね。

 

ウメチギリさん:
はい。ラフ画や仕上がりのイメージ図は描きますが、いざ、ちぎるときには下書きをしません。自分の頭に思い浮かべたイメージを辿り、紙の繊維に沿ってちぎっていきます。

 

ちぎり終えるとイメージとまるで違う形になったり、ちぎっているうちに思ってもいなかったアイデアが浮かんでそこからどんどん変わっていったり。

 

それも含めて、自分の想像を超えるものができあがっていく楽しさがあります。