和紙や折り紙をちぎって貼って、ほっこり温もりある世界を描く、ちぎり絵作家ウメチギリさん。本の装丁や挿絵の制作、ワークショップの講師など、さまざまな形で活動をしています。自分がやりたいことと、他者から求めてもらえること、その両方を大切にしながら、いかにしてゼロからちぎり絵を職業にしていったのか伺いました。

 

思わずイラストと見間違えてしまうほど精巧なちぎり絵で作ったパフェ

自閉症の女の子とのやりとりが忘れられない

── ちぎり絵作家としての活動は、どのくらい続けてこられたのですか。

 

ウメチギリさん:
気づけばもう20年になりますね。もともとはまったく違う仕事をしていたんです。

 

20代のころは現在も暮らす地元・山形県の養護学校で指導員として障がいのある子どもたちのサポートをしていました。

 

── そこからちぎり絵作家になるまでに、どんな経緯が?

 

ウメチギリさん:
子どもたちと接するなかで、「表現したい」自分の本当の気持ちに気づいたんです。

 

いまでも忘れられないのは、自閉症の女の子とのやりとり。ある日、私が仕事で失敗して昇降口でこっそり隠れて泣いていたんです。

 

一筆箋の絵柄として描いた「たゆたうくらげ」もどこか愛おしさがある

するといつの間にか隣にその子がいて、自分のコートを私の頭にかけてポンポンとなでてくれて。そしてまたどこかへ行ってしまいました。

 

そのとき思ったのです。私が考えているよりずっと多くのことを、子どもたちはわかっている。はたして自分は何を教えられるのだろうと。

 

そして、素直に自分を表現する彼らを見て、私自身、自分に正直に生きていないのではと感じるようにもなりました。

 

── 正直に生きるとは?

 

ウメチギリさん:
じつは、幼少期からモダンダンスを習っていたのですが、高校時代に足をケガしてその道へ進むのを諦めました。

 

でも心の中では「表現をしたい」思いがずっとくすぶっていた。正直な気持ちに嘘をついたまま子どもたちの前にいるより、本当にしたい表現の道に挑戦しようと考えたのです。