「自信回復」からのスタートが必要な場合も
まずは、学校に行けなくなった経緯を改めて冷静に見ることが重要になります。
“先生と合わずに”とおっしゃっていますが、暴言や体罰があった、あるいは発言内容に一貫性がなく信用できなくなったなど、明らかに先生個人の問題に原因がありそうでしょうか。
であれば、「中学に入れば先生は変わる。あなたが嫌なのはあの先生なのだから、その不信感や恐怖心を引きずる必要はない。新たにスタートすればいいんだよ」と、安心させてあげましょう。
一方、お子さんの成長が発展途上にあることで、先生の学級の運営スタイルになじめなかったと考えられる場合は、「自信の回復」からスタートする必要があります。
集団の中で自己表現の難しさを感じることがあった、かつ先生がそれを受け止めてくれなかったなどの経験から、自信のなさや疎外感を抱くようになり、学校に行けなくなってしまう子が少なくありません。お子さんがこのケースに該当するようであれば、いかに自信を持たせてあげるかが大事になります。
自分のことをどうでもいいと思っている人は学びません。勉強すれば自信が育まれるのではなく、自分を大事にしようという意味での自信があるから学ぶのです。どうかこの順番を間違えず、まずは「あなたには十分に価値がある。集団の中で自分を発揮していける」というメッセージをお子さんに伝えてあげましょう。
そして、お子さんが自分自身の理解を深め、自信が持てるようにサポートしてあげてください。おすすめしたいのは、親子で心理学の入門書などを読んでみること。自我や自尊感情、信頼関係といった人の心に関する専門の研究成果に触れることで、お子さんの「自分理解」と、ご相談者様の「わが子理解」を深めることができるはずです。
自分は学校環境の中で何が嫌だったのか、他者からどう扱われたい人間なのかなどを客観的に理解することにつながるほか、自信の根っことなる「得意なことや好きなこと」に目を向けるきっかけにもなると思います。
例えば、自分は人が喜ぶ姿を見るのが好きな人間だと気づき、「将来はみんなが笑顔になることに自分の『得意』を使ってみようかな」と考えるようになるかもしれません。そんなとき、親御さんはぜひお子さんがやろうとしていることを認めたり褒めたりしてあげてください。「頑張ろう」ではなく、「頑張れているね」とどれだけ言えるかがカギになります。
もう1つ、学校復帰を想定するならば、友だちづき合いの回復も重要です。もし同じ中学校に進学するご家庭と交流があるなら、子ども同士がLINEで連絡を取り合えるよう連携するなど、ゆるやかな横のつながりが実感できるパイプをつくってあげてください。
親の最も大事な役割は、「安心できる環境づくり」です。「学校」と「家」という2つの軸だけにとらわれず、地域とつながり、学校以外のサードプレースを大事にする視点も持ってサポートしていきましょう。