河本さんの「レギュラーに向いてるんちゃう?」で決意

── 最初は松本さんおひとりだったんですね。

 

松本さん:
そうです。そのとき、河本さんが「あるある探検隊ってリズム系やし、要介護度が高い施設に行っても、手拍子したり反応あったのは、すごいことやで。レギュラーに合ってるんちゃう?時間があんのやったら、勉強してみたら?」と言ってもらえたのがきっかけでした。

 

でも、営業先には、なかには「おじいちゃん」って言うと「おじいちゃんちゃうわ」っていう感じの人もいるから、改めて言葉づかいとかちゃんと勉強したいな、と思っていたんです。

 

最初は僕ひとりで勉強しようと思ったんですが、河本さんが「せっかくやるんやったら、コンビで勉強したほうがええよ」って。それで、「介護職員初任者研修」という資格を取ろうと、西川くんに相談したんです。でも、最初はめちゃくちゃ嫌がってましたね。

 

西川さん:
当時は、お笑いとの両立するイメージがつかなかったんです。偽善者やと思われるんじゃないか、みたいな。

 

松本さん:
西川くんが心配してたのは「イメージアップしたいからやろ」とか思われて、笑いになりにくいんじゃないか、と。その当時、ほんまに介護と笑いって全然結びつかなかったんです。

 

でも「そんなんええやんか」って。営業先のお年寄りとコミュニケーション取りやすくなったらええやん、って。いろいろ話し合って「じゃあ取りに行こうか」と。

 

ただ、最初は芸人が介護のことを勉強する、っていうのは、現場のプロから嫌がられるんちゃうかって不安はありました。中途半端にやっても失礼やし。

 

当初は、お笑いと介護のコラボレーションに疑問を持っていたという西川さん

 ── 西川さんが最終的に勉強しようと決断できたのは、どうしてだったんですか。

 

西川さん:
でも、河本さんがそうやって「レギュラーに合ってる」って言ってくれて、「コンビでやらなあかんな」と背中を押された感じはありましたよね。

 

松本さん:
あと大きな理由は、時間だけはあったんですよね(笑)。一発屋のキャラ芸人って、バーッて忙しくなった後、仕事が一気になくなるんですよ。それで、不安になって何をするかというと、資格を取ろうとするんですよ。

 

たとえば、「髭男爵」ひぐち君はワインエキスパートの資格を取ったりとか。ムーディー勝山や「天津」木村くんはロケバスの免許取ったり。お笑いとは別の何かを模索する時期があるんですよね。軽い気持ちで手をつけた介護職員初任者研修でした。

 

PROFILE レギュラー

松本康太さん、西川晃啓さんによるお笑いコンビ。1998年コンビ結成し、リズムネタ「あるある探検隊」でブレイク。2010年テレビ番組の企画で1年間宮古島に滞在し、民宿を運営。その後、介護職員初任者研修(旧ヘルパー二級)、レクリエーション介護士の資格を取得。介護をわかりやすく伝える書籍『レギュラーの介護のこと知ってはりますか?』も出版。

 

取材・文/市岡ひかり 撮影/植田真紗美