「荻窪の雑貨屋さんでひと目ぼれ」がこけしとの出会い
── ところで、川村さんの趣味は「こけし」だとか。
川村さん:
家に70体くらいありますね。気づいたらすごい増えちゃって。
こけしは東北の工芸品でもあるので、仕事やプライベートで東北に行ったときについ、たくさん買っちゃうんですよ。これ以上は棚に入らないので、減らそうとは思ってるんですけど。
── 70体はすごいですね。こけしが好きになったきっかけなど、あるのでしょうか?
川村さん:
26、7歳くらいのとき、バイトでツラい日々が続いていたんです。ある日、荻窪の雑貨屋さんに行ったときに、右も左も向かず、スッと立っているこけしちゃんに「キュン」としまして。
その子を買って、家に持って帰ったのが始まりでした。もう、そのたたずまいとか、実直な感じがするところに惚れ込みました。
── 確かに、実直な感じがしますね。
川村さん:
いつでもそこにたたずんでくれているかわいらしさもあるし。あと、木のぬくもりも魅力ですね。こけしは模様や形など、11系統あるんですけど、一つひとつ手書きなので、それぞれ唯一無二の表情をしているんですよね。
── こけしは、地域性などはあるんでしょうか。
川村さん:
津軽系こけしとか、鳴子系こけし、山形系とか、地域によってその子のおなかの部分の柄が変わったりしています。
鳴子系だったらザ・日本美人みたいな感じで、いわゆるこけしちゃん。弥治郎系は色とりどりで、黄色、緑、紫が使われてポップな感じ。他の雑貨となじむので、ファーストこけしちゃんにオススメです。
── こけしのコミュニティとか、こけし仲間のようなものはあるんですか?
川村さん:
ファンの人が、「こんなこけしあったよ」とか、SNSで教えてくれたり。
たとえば、普段は飾っておくだけなんですど、防災など緊急時に単3電池を単1、単2電池に変換できるものとか。
または地震などでこけしが倒れると、自動でこけしの足元からライトが付くものとか。そういった情報は周りの方からもけっこう教えてもらいましたね。
今は入ってないですが、昔は東京こけし友の会っていうのがあって、月に1回神田に集まるみたいな会があって。8割は高齢の男性、2割は女性なんですけど、今月は津軽系のこけしとか、毎月テーマがあって、そのこけしの歴史を学んだり、手持ちのこけしを見せあったりとか。歴史を学んだり、こけしを買ったり、そういう会もございます。
── こけしで生活が変わった部分はありますか?
川村さん:
そばに寄り添ってくれるというか、彼氏はいないけど、こけしちゃんに話せる部分はあるのかな、と思います。
PROFILE 川村エミコさん
かわむらえみこ。1979年生まれ。ピン芸人としてデビューし、2008年に白鳥久美子とお笑いコンビ・たんぽぽを結成。趣味はこけし集め、伝統こけしの目利きができる。著書に『わたしもかわいく生まれたかったな』がある。
取材・文/ふくだりょうこ 撮影/坂脇卓也