ファンとの交流で「ピア二ストであり続けられる」

── 深い思いや経験のうえに、現在の姿があるのですね。でも、このようなゴージャスな姿で活動されているのはなぜですか?

 

五条院さん:
わたくしの音楽を聴いていただいている間だけはおゴージャスな世界に浸り、つらい現実を忘れてもらいたい思いがあるからです。

 

わたくしの理想とする美しさ、言うなれば、この現実を忘れられる美しさを追い求めた先に、五条院凌という姿を見出したということになります。

 

── 聴き手を癒すためにTikTokなどでの活動を始められましたが、ご自身の心に変化はありましたか?

 

五条院さん:
はい。皆様との交流を楽しみながら投稿を続けるうちに、わたくし自身の孤独感や悲しみが薄れ、前向きになれました。

 

以前もいろんな方々と組み、ピアニストとして様々なジャンルの音楽に携わりましたが、いまの姿のほうが自然であり自由を感じます。

 

── 自然で自由…。しかし、ここまでの品格や世界観を保つためには努力しなければならないことが多くて、大変ではありませんか?

 

五条院さん:
苦労は感じておりません。新たな自分を作り上げたのではなく、むしろピアノに出会った幼少期からの思いの結晶といえます。

 

誤解を恐れずに申し上げると、“五条院凌”はずっとわたくしの中に存在していたのに気づいてあげられなかったのではないかと。

 

悲しみの中で湧きあがったのが、いわば五条院凌で、立ち上がる力をくれたということです。

 

応援してくださる方は五条院凌の世界が好きで来てくださるので、その理想を保ちたい、つねに思いきり楽しんでいただける状態でいなければと、いい意味での責任は感じております。

 

── 理想を保つ努力によって現在があるわけですね。音楽性については当初、流行曲のアレンジが多かったようですが、最近はオリジナル曲も発表されています。作曲への思いは?

 

五条院さん:
学生時代には、与えられるがままおクラシックを弾き続けていいのだろうかと悩んだことがあります。

 

自分の分身のようなピアノで、心情を自由に表現できないのはつらいことでございました。

 

じつは音楽大学に在籍していた際、教授から「作曲」を勧められたことがあります。

 

でも、当時は「おクラシックがすべて」で、ひたすら過去の大作曲家の名曲を弾いていました。ある意味、真っすぐでかたくな時期でした。

 

その後、社会に出て世界が広がり、今度は自分のために作曲をしたい心境になり、いまに至ります。