手帳売り場に、サイズもフォーマットもさまざまな手帳が出揃いました。今年、手帳を使っている人も使っていない人も、「来年の手帳はどうする?」とあれこれ悩むのが楽しいこの時期。昭和、平成、令和の手帳事情を見届けてきた“文具王”こと高畑正幸さんに、2023年の手帳のトレンドと、自分に合う手帳の選び方を教えてもらいました。

 

「今年の手帳」を紹介するYouTube動画  は大人気で毎年約5万人が視聴する
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手帳は「ビジネスツール」から「心を支える記録」へ

── アプリなどでスケジュール管理をする人も増えていますが、手書きの手帳は根強い人気がありますよね。

 

高畑さん:
日本の手帳の歴史は、明治以前にさかのぼります。福沢諭吉が、フランスでポケットに入る小さいノートを見つけて、「これは便利」と日本に持ち帰ったのが最初だと言われています。

 

当時の手帳には日付は入っていませんでした。

 

日付入りの手帳が登場したのは、明治12年、大蔵省印刷局が発行した「懐中日記」と呼ばれるものからで、特に戦後、いわゆるビジネスパーソンの急激な増加と共に普及し、昭和の終わりから平成の初めにかけて、ピークを迎えます。日本経済がイケイケだった時代です。

 

その日の仕事の大きなスケジュールやタスクを記入する「レフト型」から、ビジネスの多様化に伴って時間を細かく区切って管理する「バーチカル型」の手帳が人気となり、24時間戦うビジネスマンの必需品になりました。 

 

平成の30年をかけ、携帯やスマホの普及によってスケジュールはデジタルで管理する人が増え、経済の停滞による先行きの見通しの暗さもあり、手帳の役割はスケジュール管理をする「未来型」から、日記的な使い方をする「過去型」へとシフトしていきます。
 

 

「ほぼ日手帳」や「トラベラーズノート」のような「1日1ページ型」の手帳に、今日あったちょっといいことを書いたり、旅先で出合ったスタンプを押したり。そんな使い方をする人が増えていきました。

 


使い込まれた手帳には、楽しいことがあった日やがんばった日の手触りが感じられますよね。

 

手帳は、「ビジネスを拓くツール」から、「心を支える記録」に変わってきているんです。

 

このように、手帳は時代と共に大きく変化を遂げてきました。そして、コロナ禍で、手帳の在り方がまた大きく変わりました。