ジャーナリスト、キャスターとして活躍が続く安藤優子さん。プライベートで落ち込み、気力も体力も奪われてしまったタイミングで、海外取材にいくことに。「私は世界最大の不幸者だ」と思っていた安藤さんですが、どんな変化があったのでしょうか(全5回中の3回)。

とにかくザイールへ

ザイールの子どもたちの姿を見て

── 仕事を通して、印象的だった出来事はどんなことでしょうか?

 

安藤さん:
36歳のとき、ルワンダ難民の取材をしたときですね。

 

当時、プライベートですごく落ち込むことがあって。もう仕事を辞めて、どこかに行ってしまいたいぐらい気持ちが落ちてしまったことがあったんです。

 

しかし、そのタイミングで自衛隊がアフリカのザイール共和国(現在のコンゴ民主共和国)にいるルワンダ難民の救援に行くので、同行取材してくれって言われまして。

 

難民取材は口でいうほど簡単ではなく、難民キャンプのそばに自分たちの食料を持って行って、現地で取材をするわけです。

 

当時の私は、すっかり気持ちが沈んでしまって、気力も体力もなかった。そんな状態のときに、生と死と向かい合わせになっている厳しい現場に行って取材はできない。でも、「できる、できない」という選択肢は私にはなくて。とにかくザイールに行きました。

 

── まずは現地に着いて。

 

安藤さん:
現地では、4畳くらいの広さのところに、国連が配る青いテントを建てて生活している家族と出会いました。

 

むき出しの土の上には洗面器が1つ。子どもが6人、大人が2人、合計8人ほどの人がそのテントの中で生活しているんです。たった1つの洗面器を使って、水を飲んだり顔を洗ったり。子どもたちは下着もつけていないし裸足です。でも、めちゃくちゃ明るいんですよ。

 

彼らは、隣のルワンダ共和国から幼い子どもたちを連れて、命からがら何千キロも歩いて隣の国のザイールまで歩いてくるわけです。

 

国境を越えて難民キャンプにたどり着いて、ものすごく過酷な旅だったと思います。それでも、子どもたちははちきれんばかりの笑顔なんですね。ただ生きているだけで楽しいって。

 

その姿を見たときに、私は泣けて、泣けてしょうがなかったです。かわいそうだから泣けるんじゃないんです。「人間って、ただ生きているだけでこれだけ価値がある」と、目のあたりにしたんです。生きているということだけで、こんなにピカピカしていて、キラキラしているって。