電車に乗って日本各地を巡る国民的ゲーム「桃太郎電鉄(桃鉄)」。このゲームを教育向けにしたブラウザ版「桃太郎電鉄 教育版Lite〜日本っておもしろい〜(桃鉄 教育版)」が2023年から学校に無償提供されることが発表され話題となりました。その影には世界の優秀な教師を表彰する「グローバルティーチャープライズ2019」トップ10に選ばれた正頭英和・立命館小学校主幹教諭の姿がありました。約3年前から「桃鉄」の制作・販売を手掛けるKONAMIにアプローチし、アドバイザーとして無償提供のプロジェクトに参加してきた、その思いとは──

教育とエンターテインメントを合わせた学びを

── 正頭先生は立命館小学校の英語教諭として、ゲームのマインクラフトを使った英語授業を行われており、世界トップ10の教師にも選ばれました。今回、どうして桃鉄 教育版を授業に無償提供することを考えられたのでしょうか。

 

正頭先生:
マインクラフトで授業をする、ゲームで授業をするということが世界で表彰されました。ひとつ形にできたので、ほかにも何かできないかなと思ったんですね。

 

僕が広めたいのは、別にマインクラフトをみんなでやりましょうっていうことではなくて。エデュケーションとエンターテインメントを合わせた「エデュテインメント(教育×エンターテインメント)」の考えを広めたかったんですね。

 

そのために、他にも教育に活用できるゲームがないかと思った時に、桃鉄は最適だと思って、KONAMIさんにご相談させていただいたんです。

 

「グローバルティーチャープライズ2019」トップ10に選ばれた正頭先生(本人提供)

遊んでいるうちに、気づいたら学んでいたが理想

── 教育にエンターテインメントの要素が必要だと思われるのはどうしてなのでしょうか。

 

正頭先生:
勉強って実は贅沢品なんですよね。十分に学べない子がいる国もあります。でも、学べる環境があるのに子どもたちが積極的に学べていないとしたら、多分、楽しくないからなんだろうなと思いました。エンターテインメントと融合させることによって、子どもたちに勉強が届くようにしたいと思いました。

 

もし、子どもたちが勉強を「やらされている」と感じているとしたら、そういう形でしか教育を届けられていない大人側の責任なのかもしれません。

 

遊んでいるうちに、いつの間にか学んでいたっていう状況がつくれたらいいんじゃないかと思っています。

 

もちろん、正解はないので、いろんな教育の形があっていいと思っています。社会科においても、実際に現地を見る方法をとる先生もいるでしょうし、昔ながらの参考書を見て覚える手法の先生もいると思います。どの方法もあっていいと思います。

 

「桃太郎電鉄 教育版」のイメージビジュアル

けれど、学習の個別化が尊重される時代、ゲームで学ぶということも選択肢のひとつとしてあっていいと思うんですね。それを通して、勉強嫌いだった子どもが勉強を好きになってくれるかもしれない。

 

学び方の選択肢が増えることをしたいと思っています。いい授業でも、子どもたちに届いていなかったら、意味がないんです。

 

各校にパソコン端末が1人1台配備されたことで、エンターテインメントと教育の距離が近くなったと思います。コロナによってオンライン授業が進んだことも取り組みを加速したと思います。