「バリバリ働くだけが働き方じゃない」と気づいた
林業の世界で働く女性はまだ少ない存在です。東京チェンソーズでも、飯塚さんが初めての産休・育休取得者。飯塚さんは、みずから社内制度を整え、職場復帰を果たしました。
ところが第一子出産後は、頑張りすぎて空回りしたこともあるといいます。
「新事業が立ち上がったタイミングでもあったので、やりたいことと勤務時間の管理がまったくできていませんでした。
そのため平日は仕事、土日は育児や家事と、まったく余裕がなくて自分を追い詰めることに。今はワークライフバランスを意識して、“自分時間”をとるようにしています。
もちろん、他の人に私と同じ働き方を強要する必要もないと思っています。それぞれが満足する環境をつくっていきたいです」
現在の飯塚さんは檜原村に移住。自然のなかで仕事をし、日々の生活を営んでいます。
大都会のイメージがある東京で、林業に取り組むことに意味があると考えています。
「会社の企業理念は“東京の木の下で、地球の幸せのために、山のいまを伝え、美しい森林を育み、活かし、届けます”です。
東京は自然が少ないイメージです。でも、東京で林業に取り組んでいる私たちの存在に気づいてもらえたら、山や森林について知ろうとする人が増えるかもしれない。
少しずつでもみんなの意識や行動が変わっていれば、森林がより身近なものになっているかもしれません。
さらに、国際的な大都市である東京から発信することで、世界の国々にまで何らかの変化を及ぼす可能性もあります。
すると、それが地球の幸せにつながると、大きなスケールで考えています。
ただ、あれこれ手を広げすぎるのではなく、まずは東京の檜原村で地に足を付けて、目の前の仕事と向き合うことがいちばん大切だと思っています」
積極的にさまざまな事業に関わり、森林への深い愛情を持つ飯塚さん。お客様の声をダイレクトに受け取る現在の仕事も楽しんでいます。
「私はこの会社のビジョンに共感して入社しました。会社の方向性がブレないのであれば、どんな仕事も前向きに取り組める自負があります。
あとは働く仲間がやりがいを持って楽しく働ける環境づくりをして、長く続く林業会社にしたいです。50年、100年かけて育つ森林をずっと見守っていきたいですから」
文/齋田多恵 写真/新井加代子 写真提供(商品写真)/飯塚潤子