木は伐採され住宅や家具の材料として提供されますが、「林業はそれだけではありません。ガチャ、空間活用、精油など無限の可能性があります」。そう話すのは、東京できこりになって2児の母でもある東大出身の飯塚潤子さん(38歳)。林業のイメージを打ち破る挑戦は始まったばかりです。

捨てられるような枝でおもちゃを作りワークショップも開催

飯塚さんの働く東京チェンソーズは、林業会社としては珍しく、森林整備や間伐作業などのベースとなる仕事から、木を1本丸ごと活かした木材の商品化まで手がけています。

 

また、あまり知られていない林業の仕事について多くの人に伝えるため、SNSで積極的に情報発信。

 

2013年に入社後、きこりとして働いた飯塚さんは社内結婚、出産を経て、現在は営業や商品開発に関わっています。

 

「じつは東京都の約4割が森林です。なかでも、檜原村は9割が森林で占められています。こうした環境のなかで、前向きに森林の価値を生み出していきたいと思っています。

 

一般の人には森林のよさを知ってもらい、山仕事に取り組む人たちには、“林業はたくさんの可能性を秘めている”とポジティブに発信したいです」

 

東京チェンソーズでは、通常は山に捨てられてしまう枝などを活用して木のおもちゃを作る、子どもがきこり体験をし、親子で机を作るワークショップなど、新しい企画も積極的に実践しています。

 

こうした取り組みのひとつとして、飯塚さんは規格外で丸太としては使えない材を活かした精油の開発も担当しました。

 

「これだけ物があふれた時代に、“林業会社が精油を製造・販売する意味ってなんだろう”と、じっくり考えました。

 

その結果、“一般の人が森林や環境問題に関心を抱くきっかけになるといいな”と思ったんです。

 

森林には土砂流出防止作用や水資源を蓄え守る機能など、たくさんの公益的機能があります。

 

でも、きこりが手入れをしないと森林は荒れ果ててしまいます。一般的にこうしたことはあまり知られていません。

 

東京の木を使った精油を手にすることで森林に目を向ける人が増え、“山や森林の役割や魅力”について興味を持ってもらえると嬉しいです」