ケニアの品質の高さを日本に広めたい
現在、ラハケニアではケニア人の職人さん約20名と提携して、商品作りを依頼しています。
「洋服は作れるけど小物は作れないなど、職人さんによって得意分野があります。
作りたいアイテムが決まっても、作れる人が見つからなかったりと、職人さん探しにはずいぶん苦労しました」
地元の雑貨を扱う青空市場を訪れ、出店者に実際に声をかけるなど、みずから飛び込みで営業して地道に作り手を探して回ったことも。
「はじめの頃はほとんど英語が話せなかったので、声をかけるのもひと苦労。
震えながら、『Can you make this one?』という一文だけを覚えて、サンプルを見せて聞いて回りました」
テイラーとの製作過程ではやりとりでは苦労も絶えません。
河野さんにアパレル経験や英語力がたりないのもありますが、日本とケニアで商品へ求める“クオリティの違い”も大きいといいます。
出来上がった商品を検品していくと、縫い目が曲がっていたり、布に小さな汚れがあったり、オーダーと違う点が目につくことも。
「一生懸命作ってくれているし、なかには、その収入が大事な命綱になっている女性たちもいるので心が痛みます。
でも、感謝を伝えたうえで、妥協せずに作り直しをお願いします。
ケニア人なら気にならない程度かもしれません。『どこに問題が?』『着られるのに?』と言われることも多いです。
でも、日本で売る以上は、日本人の基準にあった商品として届けたい。
お客さんに残念な気持ちになってほしくないし、何より、『アフリカ製って質は悪いね』なんて思われたくないからです。
せっかくなら『えっ!アフリカってこんなにクオリティ高いものが作れるの!』とびっくりされたい。
私はテイラーさんの技術を尊敬しているし、一緒にブランドを育ててもらっているつもりです」
彼らの仕事ぶりを伝えるために、「ラハケニア」のSNSでは作り手たちが数多く登場します。
作り手が商品にこめた想いや彼らとのやりとり、ときには失敗もオープンにすることで、共感してくれるファンを着実に増やしています。
遠く離れたケニアで起業。経営やアパレル経験も、おまけに英語も話せない…。
できない、わからないことだらけで失敗すると、寝込むほど落ち込んでしまうこともある、と河野さんはいいます。
そんなときに思い出すのが、夫・邦彦さんからの『その方法でうまくいかなかったことがわかったのなら、進んでいるってこと』という言葉。
「失敗した経験はマイナスではなく、成功するための必要なステップ。改善と再挑戦を続けた先には形ができていく。
そう信じて、これからも失敗を恐れずに、行動していきたいと思っています」
PROFILE 河野理恵さん
1987年生まれ、神奈川県出身。法政大学卒業後、介護職、アルバイト、日本大学通信教育部(教員免許取得)などを経て、不動産会社で採用などを担当。2018年2月、夫の起業先であるケニアに移住。同12月、アフリカ布のアパレルブランド「RAHA KENYA」を立ち上げる。
取材・文/大浦綾子 撮影/新井加代子 画像提供/河野理恵