バスの行き先は「蒸37 サウナ」──。引退した路線バスを改造した移動式サウナ「サバス」が、サウナマニアの間で話題を集めています。降車ボタンはオートロウリュボタン、整理券ボックスはロウリュウタンク、つり革は温度計に…と路線バスの名残が満載。レトロなデザインだけでなく、日本最大級のサウナポータルサイト「サウナイキタイ」と協同で作り上げた、こだわりの本格サウナも楽しめます。

 

国内初となる移動式のサウナバスを実現するため、みずから会社を設立した株式会社「リバース」の松原安理佐さん(29歳)に、サバスを考案した経緯などを伺いました。

本格的なサウナと路線バスが融合した「サバス」

バス会社が休業状態に…「“移動する施設”に活用したい」

 ── 松原さんは兵庫県のバス会社「神姫バス」の社員時代にサウナバスを企画したそうですね。なぜ、廃バスの利活用に目をつけたのでしょうか?

 

松原さん:
企画を構想していた2年前は、新型コロナの感染拡大の影響で会社がほぼ休業状態になっていました。学校の長期休校や在宅ワークが広まったことで、“お客さんを乗せて運ぶ”というバス本来の需要がまったくなくなってしまい…。“人を運ぶ”以外のバスの使い方で、新たな収益を生み出せないかーと考え始めたのがきっかけです。

 

停車順は「サウナ→水風呂→外気浴→ととのう」とユーモアに富んでいる

コロナ禍でバスの利用は減った半面、キャンピングカーやキッチンカーなど“移動する施設”としての車の需要が高まっていることを感じました。より大きな空間が使えるバスだったら、もっと面白いことができると思えたんです。

 

主要路線を走っている路線バスは、減便や新車との入れ替えで不要になると、田舎の路線に売却されるか、もしくは解体して部品を取り出すか、と利活用の方法が限られています。廃バスの使い道をもっと増やせるかもとの思いもあり、廃バスの利活用に目をつけました。

 

路線バスの空気感が漂うサウナ室手前の休憩スペース

── バスを何らかの施設に利活用すると構想するなかで、なぜサウナに着目したのですか?

 

松原さん:
国内外を問わずにバスの利活用事例を探していると、フィンランドでサウナバスが走っていることを知り、そのアイデアがシンプルに「面白い!」と思ったからです。

 

レストランや会議室なども考えましたが、すべてなんとなく想像ができてしまうというか…。サウナ自体にあまり興味はなかったのですが、結果的に自分の直感が正しかったと思います(笑)。

 

当時は今ほどサウナブームではなかったので、まずはサウナ界隈の方々の感触を探ろうとしたなかで、サウナ検索サイト「サウナイキタイ」の運営メンバーに出会いました。私自身、肝心のサウナについては素人だったので、強力なパートナーを得られたことは、サバス実現に向けた大きな一歩だったと思います。

 

正直、社内の同僚からは「なんでサウナなん?」と反対の声もあがりました。

 

でも、私が出向起業すると決めたことで、周りがなんと言おうが、私自身が素直に「やりたい」と思うものを作りたいと。起業して一発目の企画はインパクトが相当強いものにしないと、情報がローカルで止まってしまう。自分のお金でやるからには、全国区の話題になるものを出したかったんです。