ステイホーム中は、娘と一緒に泣いていた
── 今は理想の働き方ができていると思いますか?
田辺さん:
「子どもが生まれたら、仕事を詰め込みすぎない」ということは、娘が生まれる前からずっと決めていて。今は仕事を自分でかなりコントロールできている状態だと思います。
実は、コロナ禍でステイホームが叫ばれていた時期はすごくキツかったんです。娘は保育園にも行けないし、外出もままならない。でも仕事は今までどおりやらないといけなくて。
それまでは、娘を寝かしつけてからある程度仕事ができていたのですが、娘も何かを感じ取っていたのか夜泣きが続いて。泣く娘を抱っこしながら、泣けてきましたね…。
── コロナ禍でも通常営業が求められるのは辛いですね…。旦那さんのフォローも必要だったでしょう。
田辺さん:
夫は仕事柄、朝がすごく早いんです。だから普段は別室で寝ているのですが、私が「もう無理!」というときは、SOSのメッセージをスマホに送っていました。そうしたら、私と娘の寝室に来て、サポートしてくれて。
とはいえ、朝早くに出勤する夫に迷惑をかけられない、仕事でミスが出てしまったら大変だ、などと考えてしまう。もう限界なのに自分でやろうって思っちゃうんですよね。
ワーッと泣いている子どもを抱きながら、自分も号泣するという状況を何度か経験したことで、「もう自分の身の丈にあった量の仕事しかしない」と心に決めました。
──「もっと仕事がしたいのに!」と焦ることもありそうですが。
田辺さん:
確かに、SNSを見たりしたときに「自分はこんなに何もできていないのに…」ともどかしい気持ちになることもあります。
でも、頻繁に作品をアップしたり、表向きでは楽しいことを綴っている人はきっと、大変なことやドロドロした感情は、あえて隠していると思うんです。
人がどれだけ充実しているように見えても、人は人。生まれ持ったバイタリティも違うんだから、比べても仕方ないと割りきっています。結局、自分ができることをできる範囲でコツコツやることが一番大事だと思うので。
── お子さんが小学生になったタイミングなどで、また働き方が変わるかもしれませんね。
田辺さん:
そうですね。子どもが帰宅してからもひとりで遊べるくらいの年齢になったら、仕事量を増やしていけたらいいなとは思っています。
娘も絵を描くのが好きなので、最近は一緒に描くことも増えて、これはこれで楽しい時間です。一丁前にiPadのクリスタ(『CLIP STUDIO PAINT』というグラフィックソフト)でお絵描きを楽しんだりもしていて。絵を通して、これから親子の関わりも変わってきそうな気がします。
PROFILE 田辺ヒカリさん
漫画家。『ひとりごはん』(少年画法社)などのアンソロジー漫画雑誌で猫漫画やグルメ漫画などを連載。2017年12月女児を出産。Twitter、Instagramでも育児漫画を配信中。
取材・文/池守りぜね 画像提供/田辺ヒカリ