本音を出しやすいオンラインの効用
── オンラインならではのカウンセリングの良さはありますか。
西岡さん:
まず、ハードルの低さです。心療内科や精神科を訪れることに抵抗感を持つ人は多いですが、オンラインであれば、自宅にいながら、自分の都合のいい時間で受けることができます。
子育てをしていると、外出がままならなかったり、時間が読めなかったりしますよね。そういう人でも利用できる可能性が広がった、という意味ではオンラインカウンセリングの果たしている役割は大きいと思います。
もうひとつ、画面をオフにして顔を出さない、本名ではなくニックネームで受けられることもオンラインだからこその価値です。「自分はこういう人間である」という像や役割からいったん離れて、素直につらさを吐き出せる。それもオンラインの効用だと思っています。
私はこれまで何度も、対面でもオンラインでもカウンセリングを受けてきましたが、やっぱり専門知識を持つ心理職の方々って問いの立て方や気持ちの引き出し方のプロなんですよ。
以前、仕事が忙しかった時期に、あるオンラインカウンセリングで画面越しに「西岡さん、ちょっと椅子から立ってみてください。私も立ちますから」とカウンセラーさんから言われて、一緒に立ったんですね。
「さっきまで座っていた椅子を眺めて、自分がまだそこに座っていると想像してみてください。どう見えますか?」と問いかけられて、「すごく疲れているし、背中も丸まっています」という言葉が自然に口から出たんです。
そこからどんどん深掘りされていくうちに、自分に対して初めて「このままだとかわいそう」と思えたし、自分で思っている以上に心身を消耗させていたことに気づけたんです。
── 身内や友人に愚痴をいうより建設的ですね。
西岡さん:
はい、これは対面でもオンラインでも同じですが、「身近な存在だからこそ話しづらい」悩みもたくさんありますよね。そういうときにこそ、利害関係がなくて、かつ守秘義務があるカウンセラーという存在はすごく頼りになると思っていて。
カウンセリングですべてが解決するわけではありません。でもそんな風に誰かの力を借りながら、自分を大切にしていく方法を身につけていく術は、人生を歩んでいく上で大切なものだなと思っています。
PROFILE 西岡恵子さん
株式会社cotree代表取締役。2013年、同志社大学法学部卒業。森永製菓、サイバーエージェントを経て、コネヒト株式会社で事業責任者を経験。その後、フリーランスとして複数社の事業戦略・キャリア支援を行いながら株式会社cotreeに参画。2022年1月より現職。
取材・文/阿部花恵 画像提供/株式会社cotree