ほとんどシングルマザーの状態で…

かなりドラマティックな、おばあちゃんの半生をお嫁ちゃんが続けます。

 

「おばあちゃんは松江市のかばん店の4人きょうだいの長女です。父親は戦争で亡くなり母親が女手ひとつで育てました。

 

学生のころに火災で店を失い、長女として経済的に家族を支えたそうです。女学校(現在の高校)では成績はトップクラスでしたが、経済的な問題で大学には進学せず、家業の立て直しに青春時代を捧げました。

 

その後、弟の家庭教師をしていた地元の名士と結婚することになりました。

 

子どもは3人できましたが、おばあちゃんの夫は海外出張の多い人で、ほとんどシングルマザーのような状態で子育てをしてきたようです。その長男が私の夫です」

 

そして、おばあちゃんが45歳のころに夫が若くして亡くなり、本当にシングルマザーになってしまいました。

 

「それでも商人の娘としての気質があったのか、女性用下着の訪問販売員として働き、トップセールスを誇っていたようです。

 

車を運転して80歳くらいまで売り続けていました。でもそのころのことは、ほとんど覚えてなくて、実家で売っていたかばんや、ネクタイのことばかりを話します」

 

若かりしころの認知症ポジティブおばあちゃん
若かりしころの認知症ポジティブおばあちゃん

施設に入れるかどうかの苦労も

おばあちゃんは、ジャズダンスやコーラスが趣味だったので、YouTubeではそんな動きや歌声が披露されています。

 

ただ、おばあちゃんも今年90歳でこれ以上、症状が改善することは望めません。これからのことは、どう考えているのでしょうか?

 

「症状が悪化すれば、介護の苦労や施設に入れるかどうかの苦悩も発信すべきなのかと考えています。

 

介護で悩む人から相談を受けることもあるので、そういう人たちの思いに応えたいとも考えています。

 

これからはスマホが、認知症介護のあり方を変える可能性が大いににあると思います。

 

撮影した動画を本人が何回も見て思い出したり、直接会えない親族などの大切な方に見てもらったり、介護で苦しんでいる方々とYouTubeで共有し、励ましあうこともできます」

 

認知症介護をポジティブに変えてしまうおばあちゃんには、さらに長生きしてもらい、周囲の人たちを、さらに前向きにしてもらいたいものですね。

 

PROFILE  認知症ポジティブおばあちゃん

1932年、島根県松江市生まれ。女学校を卒業後、20歳ころに結婚。3児をもうけ、女性用下着訪問販売員を長年続ける。2021年に『認知症ポジティブおばあちゃん』としてYouTubeデビュー。この冬に書籍を出版予定。現在は、長男夫婦、孫と同居。

取材・文・撮影/CHANTO WEB NEWS 写真提供/本人家族