夫の実家の騒動に巻き込まれるのは、よくある話。家族をはじめ、夫もパニックになるだけの事態を目にしたら、冷静さを保てる妻が動くしかない、のかもしれません。そして、新たな火種も浮かびあがってきます。

義父が浮気?スマホ画面に残る怪しいやりとり

「お父さんが浮気しているらしい。お母さんが泣いている」

 

そんな電話が義妹からかかってきたのは今年の初めだったと、ユカリさん(42歳・仮名=以下同)は言います。

 

義父がスマホを持ってから様子がおかしい、と義母は睨んでいたそうで、こっそりスマホを見てしまったのだといいます。

 

「女性と“会おう”、“楽しかった”などとやりとりしていると。義母と義妹はどうしたらいいかわからず、夫に電話をかけてきたんでしょう。それを聞いた夫もパニック状態で」

 

その話を聞いたユカリさんが、夫に「それだけじゃ証拠にならないよ」と言っても、夫はおろおろするばかり。

 

「本当に怪しいかどうか、実家に行ってお父さんに聞いてみればいいじゃない?と言ったら、そんなことできるわけないだろって」

 

夫の両親は70代。ふたりとも元気で義母は友人も多く、趣味だスポーツジムだと毎日のように出かけるタイプです。

 

一方、義父は70歳まで働いてようやく自分の時間がもてるようになったばかり。習い事を始めたとは聞いていました。

 

「両親と同居している義妹からは、毎晩のように夫に連絡がありました。それも新たな情報ではなく、どうしよう、どうしたらいいんだろうと、そればかり」

 

とうとうユカリさんは黙っていられなくなって、嫌がる夫を引っ張って、実家に行くことにしました。

実の両親の問題なのに慌てるだけの夫にイラッ

その日は義父もいるというので、実家近くのファミレスに義母を呼び出しました。

 

「義父のスマホのスクショを見ましたが、女性とメッセージのやりとりをしているのはたしかだけど、それほど個人的な内容ではないですよね。

 

なぜ浮気だと思っているのかと義母に聞いたら『40年以上一緒にいるのよ、わかるわよ』と涙目。論理的ではありません(笑)。

 

じゃあ、もし浮気だったらお義母さんはどうしたいの、離婚したいのか謝らせたいの、あるいは、別れてくれればそれでいいのかと尋ねましたが、義母は答えられない。

 

夫の態度も相変わらずで、『そんなに質問攻めにしたってわからないよ』と言う始末。ものごとを客観的に考えられないのと、とくに夫にはイラつきました」

 

そのまま義実家に行き、義父と世間話をしました。カルチャーセンターが楽しいという言葉に、何を習っているのか、友だちはできたのかとユカリさんは聞いていきました。

 

「実際、友だちができた様子。義母と夫に頼まれて、会社を休んで義父を尾行しましたよ、私(笑)。

 

カルチャーセンターが終わると、義父と50代くらいの女性ふたりが出てきて3人で喫茶店に入っていきました。

 

1時間くらいしゃべって解散。その後、義父はデパ地下に寄って、刺身などを物色して帰宅しました」

義両親の問題から見えてきた“新たな悩み”

どうして私がこんなことをしなければいけないのかと思いながら、次のときも尾行したユカリさん。

 

今度は別の女性と男性ふたり、4人で違う喫茶店に寄っているのがわかりました。

 

「単なる“仲間”だと思いました。でも義母は、家でやたらとスマホをいじっているのが怪しい、と。

 

また義父に聞き取り調査。そうしたら義父は“講談”の勉強をしていて、テキストがスマホに入っているため、しょっちゅう見ているのだそう。

 

スマホの調子が悪いから見てほしいと言われ、ことのついでにあちこち見てみましたが、女性とのやりとりも『今度はカフェでランチしましょう』という感じ」

 

結局、その講座が終わると、義父はまた別の講座を受講するようになり、別の仲間ともお茶や食事を楽しんでいたようです。

 

「夫は何もかも私にやらせたくせに結果を知らせると、“本当かなぁ”と懐疑的。だったら自分で調べなさいよと怒鳴ってしまいました。

 

何かが起こったとき、物事を順序立てて考えられない、自分で解決策も考えられない夫にはうんざりしました」

 

もういいでしょと言った彼女に、夫は「きみは冷たいよね」と言われて怒り心頭。

 

「このままだと夫婦関係が危ういわよ!と言ってやりました。夫は戦々恐々としているようです(笑)」

 

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里 

※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。