「弱り目に祟り目」という言葉は、弱ったときにさらに災難にあうことです。ただ、弱ったときこそ、誰かにつけいられる恐れもあると考えておいたほうがいいのかもしれません。

義父の入院で混乱する義母を支える日々

「義母が大変なことになっていたことが、つい最近わかって、夫は一時期パニック状態でした」

 

サチコさん(42歳=仮名、以下同)は声をひそめてそう言います。結婚して13年、11歳と8歳の子を育てながら共働きをしています。

 

車で1時間ほどのところに住んでいる夫の両親とは、ひんぱんに行き来があるわけではありません。

 

「3年ほど前に義父ががんになったんです。手術で乗りきったんですが、1年後に再発。そのとき義母は毎日、夫か私に電話をかけてきました」

 

夫はひとりっ子で義父母はふたり暮らしでした。義父が入院、さらに再発となると義母も不安だろうと、サチコさんは時間がある限り義母を励まし続けました。

 

「本当はLINEのやりとりでもできればいいんですが、義母はスマホを持ちたがらなかった。だから毎日、電話なんです。それも家の電話。

 

最初はつきあっていましたが、仕事から帰って急いで夕飯の支度をしているときなどはつい留守電にしてしまう。夫もつきあいきれないと言い出していました」

 

義父は再発したものの、それほど重篤なわけではなく、そのときも手術や放射線治療で無事に退院。

 

それ以来、夫やサチコさんが週に1回くらいは訪ねるようにしてきたのですが、コロナ禍で緊急事態宣言が出ていたおりには、さすがに行くのは控えていました。

 

退院して間もない義父、心労がたたる義母に何かがあったら大変だからです。それから数か月後、サチコさんが訪ねてみると、なんとなく家に違和感を覚えました。