コンビニやスーパーではレジの無人化も増えてきたが…

毎日出かけるスーパーやコンビニでの買い物。ただ買い物しただけなのに、「法律違反」なんてことになるケースがあるとか。知っておきたいケースを横山佳枝弁護士に聞きました。

お釣りのもらいすぎは詐欺罪や横領罪に問われる?

—— 「あれ、得しちゃったかも!」。買い物をした店でお釣りを受け取ったとき、本来の金額よりお釣りを多くもらうケースがあるかもしれません。でも、店員のミスだからといって、そのままにしても問題ないのでしょうか?

 

横山さん:
詐欺罪か横領罪(占有離脱物横領罪)、どちらかの罪に問われる可能性があります。

 

買い物ではありませんが、最近広く報道され話題になった例を挙げると、今年5月に山口県阿武町で国の給付金4630万円全額を、誤って一人の住民の口座に振り込まれた事件がありました。

 

この誤送金事件で送金先の住民がとった行動と、釣り銭ミスで犯しがちな行動は同種のものです。

 

—— 一歩間違ったら誰もが詐欺、または横領を犯しかねないわけですね。冒頭のレジでのシーンですが、2つの罪の可能性があるとはどういうことですか?

 

横山さん:
スーパーやコンビニで買い物した際、店員に渡されたお釣りが多いことにいつ気づいたのか。

 

そのタイミングによって詐欺罪に該当するのか、横領罪に該当するのか、わかれます。

 

たとえば、店員があなたの渡した5000円を1万円と勘違しているなど、レジの場面で釣り銭ミスに気づきながら何も言わず受け取ったとします。

 

その場合には、詐欺罪(刑法246条)が成立します。

 

—— 詐欺とは言葉巧みに人を騙し、金品を奪うことですよね。レジでの場面では何もしゃべっていませんが…。

 

横山さん:
詐欺罪の成立には、人を騙す行為が必要ですが、それは、相手に嘘の説明をして勘違い(誤認)させるという、積極的な行為に限られません。

 

真実を知りながら、あえてそれを告げないことにより、相手を勘違い(誤認)させたままにしておくことも、騙す行為にあたるのです。

 

このケースでいえば、店員が釣り銭を間違えていることに気づいたのであれば、「渡したのは5000円なので、お釣りが間違っていますよ」と伝えて、店員に気づかせるべきです。

 

それにもかかわらず、店員が間違えた多めのお釣りを黙って受け取ることは、騙す行為にあたり、詐欺罪が成立します。

 

山口県阿武町で起きた誤送金事件も、送金先の住民は自分の口座に4630万円が入金されたことに気づいた時点で、誤って振り込まれたことを当然認識したといえます。

 

それを銀行に知らせず、第三者の口座にお金を振り替えたことから、電子計算機使用詐欺として逮捕、起訴されたのです。

 

銀行の窓口で払い戻しをしていたのであれば、窓口の銀行員を騙す行為であり、詐欺罪が該当しましたが、銀行のコンピュータに不正な指令を出すことにより振替を行ったため、電子計算機使用詐欺罪で起訴されました。