ゴミ出しのルールは地域でも異なる

隣人とトラブルになりがちな家庭ゴミの問題。なんとなくの習慣でやっているゴミ出し行為が、法律に違反する場合も!該当するのはどんなケース?何が問題?ゴミ捨てしただけで法律違反にならないための対策を、横山佳枝弁護士に聞きました。

指定の曜日以外で家庭のゴミ出しはアウト?

—— 家庭ゴミを集積所に出す際、「ちょっとくらいならいいだろう」と、決められた日時以外に出してしまうことがあるかもしれません。これって法律的にはどうなのでしょうか?

 

横山さん:
ゴミの処理については、廃棄物の処理および清掃に関する法律(廃棄物処理法)により定められており、同法において、家庭ごみは「一般廃棄物」に分類されています。

 

同法16条では、「何人もみだりに廃棄物を捨ててはならない」と規定しています。つまり、国民全員に対し、家庭ゴミに代表される一般廃棄物の不法投棄を禁じています。

 

—— 家庭ゴミのルール違反が、“みだりに”と言えるのかが微妙な気がします…。

 

横山さん:
そうですね。市区長村で決められた日時以外にゴミを出す行為が、廃棄物処理法の“みだりに”の枠に当てはまるかどうかが問題となります。

 

その他のうっかりやりがちなゴミ出し行為を含め、法律の解釈を見ていきましょう。

地域性にもよってくる「ゴミ出しと法律」の関係

—— 廃棄物処理法第16条に書いてある「みだりに」は、どう解釈すればいいのでしょうか?

 

横山さん:
公衆衛生と生活環境の観点からみて、社会的に許されるか否かがポイントです。廃棄物処理法は、公衆衛生の向上と生活環境の保全を目的としているからです。

 

そのゴミ出しにより、公衆衛生と生活環境が損なわれる恐れがあるなら、同法に違反する可能性があるのです。

 

—— では、家庭ゴミを決められた日時以外に集積所に出す行為は該当する?しない?

 

横山さん:
ケースによっては、廃棄物処理法違反の可能性があります。ただ、社会的に「許される」「許されない」の線引きは難しいところです。

 

たとえば、ごみ回収日の前日に少量のごみを出す程度なら許されそうな反面、短時間であっても、そのゴミが悪臭を放つなどで近隣住民に迷惑をかけるものならやはり問題ですよね。

 

法に触れるかどうか、判断が難しいため、十分注意しなければなりません。

家庭ゴミを「違う場所」で捨てるとどうなるか?

—— 他にも、通勤途中で家庭ゴミを自分の住まいとは別の集積所で出した場合はどうなるのでしょうか?

 

横山さん:
他の集積所にごみ出しする行為も、基本的な解釈は変わりません。

 

ただ、ゴミの集積所は個々の地域の住民のために設けられているものですから、他の地域の住民が捨てることは前提とされておらず、社会的に許されるとは言い難いです。

 

仮にその集積所のゴミ収集日に捨てたらどうなるか。

 

他の地域の住民のゴミまで捨てられることになれば、ゴミの量が増えて集積所の許容量を超え、悪臭を放つなど近隣住民に迷惑をかけるおそれがあるため、廃棄物処理法違反の可能性は拭えません。

 

ちなみに、ゴミ出しのために他のマンションなどの敷地内に侵入した場合には、住居侵入罪にあたる可能性もあります。立ち入りは控えてください。

 

—— あってはならないことですが、商業施設、駅、コンビニなどのゴミ箱に家庭ゴミを出した場合は?

 

横山さん:
他の集積所にゴミ出しした場合と考え方は同じです。商業施設、駅、コンビニのゴミ箱はそれぞれの施設利用者に対して設けられています。

 

施設利用者以外のゴミ出しは想定されていません。つまり、先の例と同様に社会的に許されず、廃棄物処理法に違反する可能性があります。

 

なお不法投棄の法定刑は、「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または双方」(廃棄物処理法第25条)とされています。

 

不法投棄というと、「山に大量のごみを捨てる」「他人の敷地に粗大ごみを勝手に置く」といったイメージですが、家庭ゴミをみだりに捨てる行為も不法投棄と認識しなければなりません。

 

—— SDGsが叫ばれるなか、ゴミ問題は今後より厳しく管理されていくはずと横山さんは指摘します。意識を高め、ルールをきちんと守ることを肝に銘じましょう。

 

PROFILE 横山佳枝さん

弁護士(原後綜合法律事務所)。2001年に名古屋大学法学部を卒業し、04年に弁護士登録(第二東京弁護士会)。10年に南カリフォルニア大学ロースクール(LL.M)へ留学し、14年にニューヨーク州弁護士登録。著書『お仕事六法』など。


取材・文/百瀬康司 ※画像はイメージです