「何も考えなかった」は嘘。迷ったけれども…
── 時代が移り変わり、フジテレビも河田町からお台場へ移転。アナウンサーの方々も、フリーアナウンサーになったり、異業種の仕事に就かれる方もいらっしゃいます。西山さんは、そういったことを考えたことはありましたか?
西山さん:やっぱり「何も考えなかった」と言ったら嘘になりますね。
このまま私がアナウンサーを続ける意味はあるのだろうか。この会社で私は果たして役に立ち続けることができるのだろうか、とかね。周りの環境が変わっていく様子を見ながら、自分自身を見つめ直すことはやっぱりありました。
── たとえば、同期の小島奈津子さんが退職されたときなど、身近な人が退職していく様子を見て、影響されたりは?
西山さん:小島の場合は結婚を機に退職したので、彼女らしい決断だな。素敵だなぁと思ってあと押しをしたので、そんなに影響は受けなかったですね。
── フリーアナウンサーについてはいかがですか?西山さんのようにお子さんがいらっしゃる方は、時間の融通なども考えて、フリーを選択される方もいらっしゃるかもしれません。
西山さん:いろいろ考えてはみたのですが…、やっぱりフジテレビが好きなんですよね。
ここまで長く働くと、どこかファミリーのような気持ちもあるというか。社内を見渡しても「あの人も頑張ってるなぁ」とか、「入社した当時、頼りなかった後輩も今ではこんなにたくましいディレクターになってるなぁ」とか。私自身も後輩が増えて、「キクさん、これについてどう思います?」と相談されることも増えました。
それに、もう30年間ここにいるので少し手放すのが怖い。違う場所に行くのが怖いような気持ちもあるのかもしれません。ただ、それ以上に家にいるような安心感があるのだと思います。
── 時間を重ねて作られた関係性もありますものね。
西山さん:収録が終わった後に、スタッフに「今日もありがとう。西山でよかったよ」とか、「今日の録音よかったね。ありがとう」って感謝の言葉を言われると、今でも本当に嬉しくて。視聴者の方からいただくメッセージも、とても嬉しいです。
時代も周りもどんどん変化しています。でも、フジテレビの根本にある「みんなを楽しませたい」という気持ちは、私が入社した頃から変わっていないなと思います。
私自身、入社以来、いろいろな方に応援してもらったり、助けてもらったり。いつも「なんてありがたい仕事なんだろう」と感謝しながら仕事を続けていたら今に至っています。
PROFILE 西山喜久恵さん
広島県出身。1992年フジテレビに入社、局次長職チーフアナウンサーとして管理業務も行う。『めざましどようび』『めざましテレビ(「きょうのわんこ」ナレーション担当)』、駅伝中継などで活躍。
取材・文/間野由利子 撮影/坂脇卓也