居続けると決めると苦しくなる

── これからも海士町で活動を続けられますか。

 

阿部さん:
ここに居続けなければならないと思うと苦しくなる日が来ると思うんですよね。居続けることを目的とすると、自分の可能性は世界中どこにでもあるのに狭めてしまう気がして、それは嫌だなと思っています。今のところ、島から出ることは考えてないですけどね。

 

約半数の島民が参加する「キンニャモニャ祭り」の実行委員も担う

── 海士町に移住を考えている方がいらしたら何とおっしゃいますか。

 

阿部さん:
ここはくるもの拒まず、去るもの追わずです。そして移住だけでなく、小中学生、高校生、大学生、企業人の島留学として短期で住んでもらえる制度もいろいろとあります。やってきたらもちろん町のことを知ってほしいし、やりたいと思うことを存分にやってくれたらいいなと思います。

 

── 2008年に移住されて、今ちょうど14年ぐらいですか。目指す社会モデルとは何でしょう。

 

阿部さん:
人と人、人と自然の温かい関係性があり、誰しもが自分の新たな可能性に一歩踏み出せる社会だと思います。

 

海士町の夕焼け

地域に住んでいる人や地域を訪れた人、多様な人が交流することで、自分の当たり前が揺さぶられる。そのなかで、自分が心から望む新たな可能性に気づき、交流で育まれた仲間と励まし合いながら、勇気を持って一歩踏み出していく。その挑戦が続いていった結果、持続可能で、みんなが幸せになれる社会を創り出したいと思っています。

 

取材・文/天野佳代子 写真提供/風と土と