『かもめ食堂』『彼らが本気で編むときは、』などで知られる荻上直子監督がオリジナル脚本を手掛ける映画『川っぺりムコリッタ』が9月16日から公開されます。「友達でも家族でもない。でも、孤独ではない」をテーマとした本作品。監督に思いを伺いました。

孤独と孤立は違う

── 今回の作品では、大切な人やものを失った人が出てきます。原作となる小説で主人公が「人生がまだあと半分もあるのかと思ったら愕然とした」という文が印象的でした。

 

荻上監督:
漠然とした不安みたいなものは、みなさん抱えていらして、将来に対する不安って誰もが持っていると思うんです。30代ぐらいだと余計にあるとは思います。

 

── 映画では「友達でも家族でもない。でも、孤独ではない」関係性の人間模様が描かれていて、素敵な繋がりだと感じました。

 

荻上監督:
孤独って、すごく大事だと思うんですよ。自分もひとりきりでいないと創作できなくて、脚本は書けません。

 

この作品の小説の表紙を飾ってくれた写真家の川内倫子さんと話したとき、「家族がいても、かわいい子どもがいても、創作ってのは絶対孤独。ひとりでいないと生まれないものだ」ということをおっしゃっていて、私も共感する部分がありました。

 

孤独って大切にしていいものだと思うんですね。ひとりでいていい時間ってあると思うんです。

 

だけど、そんななかで、孤立しちゃうのがよくないってある青年と対談したときに言われて。

 

孤独でなく、孤立し、人と関わりがなくなると自殺を考えてしまう人がいると言っていて、確かにそうだなと思ったんです。

 

相手とべったりじゃなくても、そのときだけ、この時間だけ、ぎゅっといる人たち。

 

この作品のアパートにいる人たちは、そこから引っ越したら二度と会えないメンバーだと思っていますが、べったりしすぎない関係性ってあっていいのかなって思っています。

 

孤独感について話す荻上監督

── 監督自身は孤独感に負けることはありますか。

 

荻上監督:
ないです。全然ないです。私、ひとりでいるのが好きで。ちょっと脚本が進まないと映画を観るのも仕事だからとひとりで映画観に行ったりして。全然、苦痛じゃないです。

 

なんならひとり旅もしています。子どもが夏のキャンプにいっている間にひとりで車中泊、道の駅に泊まったりして、スナフキンしています。

 

去年ひとりで旅していたんだけれど、家族がいるとひとりの時間がなくなるので、創作とは別に旅をするってすごくよかったんですよね。

 

仕事とは関係なくて、ただただ旅を楽しむひとりの時間が楽しかったです。車中泊しつつ、宿にも2日ぐらい泊まって、東北に行きました。仕事のことは考えないようにしました。