文部科学省の調査によると、2020年度の不登校児童生徒数は約20万人と過去最多となり、学校に行けなくなったわが子をどう支えるべきか悩む親御さんも増えています。お子さんの保健室登校が始まり不安を抱える相談者に、教育家・見守る子育て研究所所長(R)の小川大介先生がアドバイスします。

【Q】保健室登校をスタートした息子。不満と不安で辛い…

小学5年の男の子の母です。先週から保健室登校をしています。朝、体調不良を訴える日が増え、学校を休むようになりました。とはいえ、昼過ぎになると、とても元気で食欲もあります。でも、翌朝になるとまた具合が悪いと言います。顔面蒼白で嘘をついている様子はありません。起立性調節障害も考えましたが、かかりつけの小児科では「昼夜が逆転しているだけ」と診断をつけてもらえませんでした。

 

担任の先生、スクールカウンセラーと相談してはじめた保健室登校ですが、学校の方針が「30分だけの登校を一週間続けてみよう」と、かなりスモールステップなのも不満です。登校できたのだから給食は食べてくればいいのに…などと思ってしまいます。

 

このまま教室に復活できなかったら、フリースクールを選んだほうがいいのか…などいろいろと不安です。現時点での気持ちの持ちよう、子どもへの接し方について教えてください。

「答えが欲しい症候群」ならアプローチを変えること

「朝は苦しいけれど、昼には元気」という状態は、まじめな子に多いです。朝は「学校に行かなければ」と思うものの、頑張ろうと考えるほどしんどくて行けない。でも、昼になると「ちゃんと過ごさねば」というプレッシャーを手放せるので楽になるわけです。

 

しかしそのぶん、「明日はちゃんとしなければ」と自分で自分に負荷をかけてしまうのでしょう。夜になるとうまくできなかった自分のことを悶々と考えてよく眠ることができず、再び朝が来てしんどくなる。このサイクルが繰り返される辛い状況なのだと思います。

 

周囲がお子さんの苦しさをもう少しわかってあげてほしかったですね。お子さんには今、言葉で説明できない違和感や不安感があるはずで、できる限り「何かをしなければ」という環境から解放し、無理のない状態を見つけてあげる必要があります。

 

だから、スモールステップの方針を示した学校は間違っていません。先生やスクールカウンセラーの方々が、理屈ではなく、お子さんの苦しさに寄り添おうとされているのが伝わってきます。

 

私は「見守る子育て」を提唱していますが、その根幹は、お子さんのありのままの姿を見ることにあります。ご相談者様にも「お子さんのありのまま」を見ていただきたいなと思います。

 

しかし、「ありのままを見る」というのは非常に難しいこと。そもそも人には見方に偏りがあるため、ちゃんとお子さんを見ているつもりでも、素の姿が見えていない場合も。そうすると、親御さんがよかれと思ってやることのタイミングがすべてずれて、お子さんが苦しくなっていきます。

 

つまり、お子さんのありのままを見るためには、前提として「自分の見方は偏っている」という自覚が重要になります。ご相談者様もその視点に立ってみてください。

 

起立性調節障害やフリースクールなど、不登校について勉強されている様子はうかがえますが、お子さんの体の声に耳を傾けようとされていますでしょうか。心のどこかに、解決を急ぎたい気持ちや焦りが潜んでいるのではないでしょうか。

 

実は今、子育てが思うようにいかなくなった際、ご自身の都合で焦ってしまう親御さんが少なくありません。結論を急いだり、お子さんの状態を小児科の先生に診断名をつけてもらう「答えが欲しい症候群」に陥っている親御さんが多いと感じます。自分が安心したいがために知識や型に当てはめて問題を片づけようとした瞬間から、お子さんの「ありのまま」は見えなくなります。