「いやどうも」はオールマイティに使える便利表現
── ラッパーとして活動されるきっかけは?
青木さん:
もともとラップが好きだったこともありますが、どうやって茨城をアピールしようかと考えていたところ、茨城にはご当地ソングが少ないと気づいたんです。橋幸夫さんの「潮来笠(いたこがさ)」くらいしかない。
それなら歌を通じて茨城を知ってもらおうと考えました。
茨城弁がラップにのせやすいことも理由のひとつです。
2014年からYoutubeで配信したところけっこう話題になり、テレビやラジオなどのメディアにも取り上げてもらいました。
── 茨城弁は若い人も使っているのですか。
青木さん:
「〜だっぺ」のようなわかりやすい茨城弁は、若い人はほとんど使いませんね。町内の集まりなんかで、年配の方たちの会話で聞かれるくらいです。
でも、なまっている人はたくさんいますよ。本人は標準語を話しているつもりでも、アクセントが違うからすぐにわかります。
── 茨城弁で好きな表現はありますか。
青木さん:
「いやどうも」ですね。挨拶としても使えますし、どんな受け答えにも応用できます。言い方ひとつで、驚きや同意、謙遜まで、あらゆる感情を表現できる万能な言葉です。茨城で困ったら「いやどうも」と答えておけばなんとかなる(笑)。
私が販売を手掛けているグッズの中でも、「いやどうもTシャツ」はロングランの人気があります。
── イバラキングさんから見た茨城の魅力は?
青木さん:
山も海もあり、自然が豊かで野菜も肉も魚も何でもとれます。絶景が楽しめる温泉もありますし、キャンプやグランピングを楽しめる施設も充実しています。あまりアピールしないから全国的には知られていませんが、まさに「いいやんべ(いい塩梅)」に何でも揃っています。
それでいて東京からのアクセスもいい。かつては車で行かないと不便でしたが、つくばエクスプレスなど公共交通機関が増え、自転車でスイスイ走れる「りんりんロード」も整備され、便利になってきています。
県内まんべんなく人口密度が低いから、コロナ下でも特に意識せずとも「ナチュラル・ソーシャルディスタンス」が保てるところもアピールポイントです。
といっても控え目な県民性ゆえに、あまりガツガツアピールしないところもまたいいんですけどね。
これからもガツガツせずに、しっかり茨城の魅力を発信していきたいです。
PROFILE 青木智也さん
1973年茨城県常総市生まれ。大学入学を機に上京し会社員になるも、都会の暮らしに疲れて2000年にUターン。茨城の魅力をユーモアたっぷりに発信するwebサイト「茨城王ーイバラキング」を運営する。2004年には『いばらぎじゃなくていばらき』を出版し、県内でベストセラーに。ご当地ラッパー「イバラッパー」としても活動している。
取材・文/林優子 写真提供/青木智也