子どものためにも、社会を変えたい
── どんなときに幸せを感じますか?
村木さん:
子どもとパートナーが笑ってくれるときですね。メロメロです。泣かれたり、わがままを言われたりもしますが、そういったことも含めて日々成長してくれることが嬉しいです。
日本では、まだ同性同士の結婚が認められていないので、私とパートナーが産んだ子どもは、法的には親子ではない(パートナーがシングルマザー扱い)のですが、どうしてそういう状況なのか、子どもにしっかりと説明できるようにしたいです。子どもはもう大人の言っていることが理解できる年齢です。一刻も早く、同性婚ができる社会になるように、より大きな声を上げていきたいと思っています。
今、取り組んでいるのは、婚姻の平等(同性婚の法制化)に賛同する企業を可視化するキャンペーン「Business for Marriage Equality」の活動です。社外取締役を務めるテイクアンドギヴ・ニーズは、婚礼業界でいち早く賛同に手を挙げてくれました。日本では、人口の数%がLGBTですので、従業員にも同じような割合でいると考えていいと思っています。
LGBTに関するハラスメントがあることで、十分に力を発揮できていない、チームワークがうまく機能しないなど、見えにくいところで生産性にマイナスの要因になる。それが改善されれば、マイナスではなく、プラスの要因になると期待できます。
また、私たちのような多様な背景を持つ家族も増えています。次の世代の安心を守るためにも自分の活動に力を入れていきたいです。子どもの成長スピードは速いので、一日でも早く、自由な結婚が認められる世の中にしたいと思っています。
性別ではなく目の前の子どもを大切に
── LGBTの視点から日本の子育てで課題に感じることはありますか?
村木さん:
昔からモヤモヤしていたことですが、子育てをしていると、男女の違いをあえて前面に出す商品やサービスが多いことに改めて気づかされます。おもちゃ売り場でも洋服売り場でも、いろいろな商品が男女別に陳列されているんですよね。子育ての本や漫画でも、「パパ」「ママ」が当たり前のように並んでいるし、そういった表現にモヤモヤしている人はたくさんいると思います。
例えば女の子が男の子向けのヒーローのおもちゃや緑のTシャツを手に取ったら、「それは男の子のものだよ」と周りの人が言ってくることがあると思います。女の子がスカートを履きたくなくてズボンを履いていても、「スカートを着せてもらえなくてかわいそう」と余計なひと言があったり。女の子が髪をショートにしていたら「どうして長く伸ばさないの?」と聞かれたり。余計なお世話だと思うんです。まだ、そういう男の子らしさ、女の子らしさに関する圧力を感じています。
── 気づかないところで性別を意識させられる場面に触れているんですね。
村木さん:
そういう社会のあり方にモヤモヤを感じながら子育てをしている人はたくさんいると思います。LGBTの視点を持つことは、ジェンダーについてより関心を持つことになります。それは一人ひとりの子どものためにも良いことだと思うんです。女の子が虫や車を好きでもいいですよね。男の子がファッションやドラマに興味を持ってもいいじゃないですか。
子ども一人ひとりの興味・関心を受け入れることが、子どもに寄り添うことだと思います。その子が目を輝かせていることに注目をしてほしいです。
── 最後に、普段、村木さんが励まされることや言葉などを教えてください。
村木さん:
うちでは子どもがよくハグをしてくれます。マイノリティの問題に向き合っていると悔しい思いをすることも多いのですが、家で落ち込んだり憤ったりしていると、子どもが「よしよし」とハグしてくれるんですよ。いつかしてくれなくなるときも来るかもしれませんが、今はこのハグにいちばん励まされています。
PROFILE 村木真紀さん
1974年茨城県生まれ。認定NPO法人虹色ダイバーシティ理事長。社会保険労務士。京都大学総合人間学部卒業。関西学院大学非常勤講師。MBSラジオ審議委員。日系大手製造業、外資系コンサルティング会社等を経て現職。LGBT当事者としての実感とコンサルタントとしての経験を活かして、LGBTに関する調査研究、社会教育活動を行っている。大手企業、行政等で講演実績多数。著書に『虹色チェンジメーカー LGBTQ視点が職場と社会を変える』など。
取材・文/高梨真紀 写真提供/村木真紀