LGBTの視点から企業の職場環境の見直しに取り組む認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表の村木真紀さん。今年6月末よりウエディング業界大手の株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの社外取締役に就任し、新たな活動を始めました。そんな村木さんは、現在、お子さんを育てる親でもあります。子育てを通して感じることを教えていただきました。
子育てが「3度目の転機」に
── これまでの人生で大きな転機だと感じたことを教えてください。
村木さん:
まずは生まれ育った茨城県から京都の大学に進学したことです。京都では自分以外のLGBTの友人たちと出会えて、すごく心が解放されました。
2つ目は、何社か転職を繰り返した挙句、うつ状態に陥ってしまったこと。そして最近では、子どもを授かったことが大きな転機になりました。
── 京都の大学に進学した話から教えてください。
村木さん:
子どもの頃から自分は他の人と違う、と認識していて、地元の中学から誰も行っていなかった高校に進学しました。さらに高校生のときにはっきり同性愛者だと自覚し、地元では生きていけないと思って京都へ移り住みました。自分の内心を周囲に悟られるのが怖くて、居場所ができてはそこから逃げるような経験をしてきました。仕事でも数年おきに転職を繰り返していました。
やはり疲れが溜まっていたのか、最後の職場でうつ状態になるのですが、でも、まさか自分がうつになるなんて思ってもみなくて。男性に頼らなくても自分の力で稼いで生きていけるとプライドを持っていましたので、その分、自分が働けなくなったときはすごくショックでしたね。
そんなどん底のときにも、周囲に支えてくれた人が沢山いたことはありがたかったです。なかでも、LGBTの友人が「あなたが生きていけないとしたら、世の中のほうがおかしい」と言ってくれたことは、何の根拠もないと思いますが、すごくうれしかった。
そんな中、子育てのことは自分の人生ではまったく想像できていませんでした。子どもの頃から、「結婚しない、子どもは持たない」と思っていましたから。
子育てで自分の子ども時代の傷が癒やされていく
── 考えが変わったきっかけはあるのでしょうか。
村木さん:
身近に子育てをしているLGBTの方がどんどん増えてきたんです。それでパートナーと相談し、子どもを授かることができました。今までメディアではあまりお話ししないようにしていたのですが、実はもうすぐ小学生です。LGBTの子どもたち同士で一緒に遊んだりするのがすごく楽しいですね。
── 子育てをしていてどんなことを感じますか?
村木さん:
子どもと接するなかで、自分が子どもの頃に経験したことをやり直すことができ、つらい記憶が癒やされていくのを感じます。
たとえばおままごとだと、お母さん役やお父さん役を割り振られますよね。私はどちらもやりたくなくて、困った挙句に犬役になったりしていました。きれいな色のドレスを着て舞踏会に行って王子様と踊るという、女の子ならではのストーリーにも全然ときめかなくて…。
今、子育てを通して社会の変化を感じています。衣類ひとつとっても選択肢が増えましたよね。女の子向けの下着って必ずと言っていいほど前にリボンがついていて、私はあのリボンがとにかく嫌で取って着ていたものですが、今はかっこいい服も増えたなあと思います。ランドセルの色もさまざまな色を選べるようになりましたし。
子どもと一緒に、もう一度自分の子ども時代を再体験しているような感覚で、「最近はこういうのもあるのか」と感心しています。
私はアウトドアが好きなので、これから子どもと一緒に、海や山、水族館や動物園など、たくさん出かけたいですね。