テレビ東京のアナウンサーとして、『Newsモーニングサテライト』(以下、モーサテ)などの報道番組や『出没!アド街ック天国』(以下、アド街)といったバラエティで、高い実力を発揮している片渕茜さん(29)。
メインキャスターの経験を通じ「改めてしっかりした準備が、対応力や伝える力につながると実感している」と話します。正しく情報を伝える仕事に向き合う日々のなか、コロナ禍で変化した番組制作の現場。その状況をどう乗り越えているのか、お話を聞きました(全4回中の2回目)。
ジャンルで準備のバランスを変える
── 生放送の報道での準備の重要性をお聞きしましたが、バラエティの場合には、準備の面で違いがありますか?
片渕さん:
報道ではできる限り事前準備をしていますが、バラエティは準備しすぎるときゅうくつな感じになってしまいます。報道の準備を10とすると、バラエティは準備7、余白3くらいのイメージでしょうか。
きちんと進行しつつ、その場で感じたことを素直に表現するほうが、バラエティでは番組の楽しさをより伝えられる。ですので、そういう“余白”を残して収録に臨むようにしています。
コロナ禍で距離が生じる撮影現場での苦労
── コロナ禍で取材や収録のやり方が変わり、間合いが取りにくいなど、「聞く」ことの難易度が上がっていると思います。
片渕さん:
慣れてはきましたが、難しい場面もありますね。報道では元々、海外の中継先とのやりとりなどもあって、リモート対応は比較的問題なくできます。いっぽうで、トーク番組やバラエティはテンポ感が大事で、一瞬の“間”で空気が冷めてしまうことも少なくありません。
4月まで担当していたサッカー番組『FOOT×BRAIN』では、出演者の方がスタジオにいて、MCの私がリモートで進行する形がありました。
事前にある程度、内容が決まっている報道番組と違って、トーク番組ではアドリブで次々と話題が変わることもあります。特に複数の出演者が、それぞれの立場から話すようなクロストークの場面。「今、この人が話したがっているな」「これで話し終えたな」と、ちょっとした空気感やしぐさで察していた部分も大きいので、リモートでの進行には、かなり難しさを感じましたね。
── スタジオでも座る位置やパーテーションなど、共演者と物理的に距離ができて、大変なことはないですか?
片渕さん:
昨年1月から担当になった、いろんな街の魅力を紹介する「アド街」は、コロナ禍でセットが変わりました。司会の宣伝部長・井ノ原快彦さんをはじめとするレギュラーメンバーに加え、ゲストの方もいて出演者が多い番組です。
オンエア上では編集でギュッと集まっていますけど、実際はいちばん端の薬丸裕英さんから、反対の端に座る山田五郎さんまで、10m以上離れて収録しています。
1人ずつ椅子があって、両サイドにパーテーションが置かれて…1人座ってパーテーション、1人座ってパーテーションとなると、かなりの距離ができてしまいます。そのため、お互いの声が聞き取りにくかったり、話そうとして被ったり…ということもしばしば。
確かに苦労はありますが、もう「これがコロナ禍の、ニューノーマルだ」と思っています。
ただ私がアド街の4代目秘書に就任したのが、このセットになった後なので、元々のセットで収録した経験がないんです。だから、いつかはオリジナルのアド街のセットで、進行できる日が来たらいいな…と思っています。