怒りの温度を自覚し、怒りに振り回されない準備をする
相談者さんは、「もう縁を切ります!」と啖呵を切ってしまったとのこと。怒りは攻撃の感情です。アンガーマネジメント(怒りのコントロール)の話にもなってきますが、怒りを出すこと自体は問題ありません。ただ、怒りに振り回されないことが大事です。
ここで、上手な怒りのコントロール方法をご紹介します。
水が100度で沸騰するように、怒りも100度で沸騰すると考えてみましょう。自分の感覚で怒りの温度を感じ取り、怒りが沸点に到達する前に火から下ろす(=気持ちを切り替える)ようにすると、上手にコントロールできます。
例えば、「今は60度くらいかな?」と感じたら、(そろそろやばいかな…)と怒りの温度上昇を自覚し、「今は80度くらいかな?」と感じたら、「ちょっとお手洗いへ行ってもいいですか」などと伝え、その場から離れるのです。
沸点に到達する前の「気持ちの切り替え方法」はいくつかあります。
- その場から離れる
- 深呼吸をする
- 冷たい水を飲む
- 落ち着く香りを嗅ぐ(ハンカチに香りを染み込ませておく、香水を手首にひと吹きしておく、など)
などが一般的ですが、「漫画を読む」「歌を歌う」などご自身で切り替え方法をすでに持っているなら、それを使うのがいいでしょう。
相談者さんが、もし義父母に謝りに行くなら、怒りをコントロールできるよう準備を整えておくといいかもしれません。
また、謝るとき、前述した「怒りの後ろにある感情」についても相手に伝えられるとベストです。
たとえば、「実は一緒に住めなくなることが、寂しくて悲しいという気持ちが湧いてきて、それが怒りにつながって爆発してしまいました」と正直に伝えてはいかがでしょうか。きっと義父母は「そういう風に感じていたんだ」という気づきになると思います。
義父母との関係だけでなく、実の両親、夫婦、きょうだい、子どもなど、家族だからこそ怒りの感情が湧きやすいことも多いのではないでしょうか。そんなときはゆっくり深呼吸。怒りの前に感じた素直な自分の心に、自分自身が気づいてあげられるといいですね。
PROFILE 八木経弥さん
やぎ・えみ。臨床心理士/公認心理師。心療内科や児童相談所、スクールカウンセラーなどの勤務経験のもと、開業カウンセラーとしても活動中。仕事では心理学を活用した育児の方法などを伝えている。2人の娘の母。
取材・文/大楽眞衣子