大人が抱えやすいモヤモヤについて、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺いました。今回は、大ゲンカでこじれた義父母との関係をなんとか元に戻したいと悩む女性の相談にお答えします。

【Q】義父母と大ゲンカ…吐いた言葉を撤回したい

夫が長男ということもあり、義父母と20年近く一緒に暮らしています。しかし先日、義父母が「家を出て行ってほしい」と言ってきました。話を聞くと、「娘夫婦と同居したい」とのこと。これまで何度かケンカがありつつも、いま住んでいる家が、将来自分たちの持ち家になるから…と思ってここまで頑張ってきたのに、突然そんなことを言われて腹の虫が治まりません。

 

それから言い争いになり、「もう縁を切ります!」と啖呵を切ってしまいました。私たち夫婦が家を出て行くことはもう変わらなそうですが、今後の相続のことなどを考えると、「縁を切る」という言葉は撤回したい気持ちです。どうしたらよいでしょうか。アドバイスをお願いします。

「怒り」は寂しさや悲しみの感情が溢れた二次感情

子どもと違って、大人のケンカはこじれるとなかなか難しいですよね。大人なので、お互い後に引けないプライドもあるかと思います。でも、ここは言い訳せず、素直に謝るのがいちばんだと思います。

 

「この間はすみませんでした」

 

と早めにさらっと伝えてはいかがでしょうか。思いあぐねて時間を置くと、かえってややこしくなってしまいそうです。

 

その前に、なぜ怒りが湧いてきたか、冷静に考えてみましょう。怒りは「二次感情」と言われます。いきなり怒りの感情が湧いてくるのではなく、その前の段階で「寂しい」「悲しい」「無力感」などを感じていることが多いです。その感情が自分の心のコップから溢れると怒りになるのです。

同居はあまりうまくいってなかったようですが、20年近くも一つ屋根の下で暮らしてきたわけですから、少なからず「情」はあると思います。これまで、たくさん我慢してきたことも、ひょっとしたら楽しかったこともあったかと思います。

 

そんな日々を否定されるかのような、義父母からの同居解消の申し出。「私じゃなくて、実の娘を取るんだ…」という寂しさや虚しさがまず湧き出て、相談者さんの心もさぞかし傷ついたことでしょう。

 

そういった切なさが溢れて、怒りという感情が爆発したのかもしれません。

 

怒りが湧いてきたときは、「どうしてこんなに腹が立つんだろう」と、上のコップの図のように感情を紙に書き出してみるのもおすすめです。