保護者が子どもに頼るメリット

── 誰かと助け合うのはいいことだと伝える方法はありますか?

 

吉田さん:
保護者が、誰かと頼り頼られる姿を見せるのが一番だと思います。自分のパートナーや両親、ママ友だけでなく、子どもに頼るのもいいかもしれないですね。

 

保護者から子どもに「今日、紙を指で切っちゃったんだ」「この靴を履いてたら滑っちゃってさ」「今日、キャベツとお肉があるんだけど、夕飯何がいいと思う?」「このトーマスのお友達、なんていう名前?」…といったように、日々の小さな失敗談や相談事、子どものほうが詳しい話を聞いてみるといいと思います。

 

子どもが受け止められないような深刻な話や、パートナーを含め他人の悪口、子育てに対する不満や愚痴は避けましょう。

 

子どもが話を聞いてくれたら、「ありがとう、聞いてくれてとっても気持ちが楽になったよ。お母さんも、何かあったら話を聞けるとうれしいな」「さすがだね、全然知らなかった。また教えてね」などと伝えてください。

 

── 頼られた側の充足感を味わってもらえれば、子どもが誰かに頼るときのハードルも下がりそうですね。

 

吉田さん:
思春期頃からは、頼り合うことが信頼の証であることも理解できるようになります。たとえば、友達につい遠慮してしまうとき、「あなたがその子だったら、友達が遠慮して自分の気持ちを言い出せないと知って、どう思う?」といった語りかけも効果的かもしれません。

 

いつか保護者の元を巣立っていくときのためにも、人に頼り、頼られながら生きることを教えていきたいですね。

 

PROFILE 吉田穂波さん

医師、医学博士、公衆衛生学修士、神奈川県立保健福祉大学大学院教授。六児の母。博士号取得後、ドイツ、イギリスで産婦人科、総合診療の分野で臨床研修を経験。08年、ハーバード公衆衛生大学院卒業。著書に『「頼る」スキルの磨き方』(KADOKAWA)など。

取材・文/有馬ゆえ