子どもにもっと頼ってほしい。困ったときは、周囲と助け合える子どもに育ってほしい。そんな親心に反し、子どもは大きくなるにつれて、自分からSOSを出すことは減っていきます。子どもが将来、ピンチに陥ったときのために、保護者は今、どんなサポートができるのでしょうか?『「頼る」スキルの磨き方』の著者で医師の吉田穂波さんに聞きました。

「やって」「抱っこ」は頼ることを教えるチャンス

── 嫌なことがあったとき、困ったとき、子どもには誰かに相談してほしいと思います。子どもが人に助けを求める力をつけるために、保護者はどんな工夫ができますか?

 

吉田さん:
子どもが「できないことは『できない』と言っていいのだ」と思えるような接し方をしたいですね。たとえば、保護者に何でもしてもらって当たり前だった乳児期を終え、3、4歳になると、子どもは自分でできることが増えていきます。そこで「一人で服を着られたね」「トイレを教えられたね」とほめるだけでなく、何かができなくても否定しないこと。

 

できなかったことを茶化したり、叱ったりすると、「失敗してはいけない」「わからないけど聞けない」と考えるようになってしまいます。

 

── 具体的に、どんな声がけをするのがいいですか?

 

吉田さん:
「わからなかったらすぐ聞いてね」「最初は失敗しちゃうよね。そういうときは人に助けてもらってもいいんだよ」と言えるといいと思います。

 

それを繰り返すうち、「世の中にはできないこともある。少しずつできるようになったり、本当にできないことは人に助けてもらったりしていいんだ」という考えが育ちます。

 

── 子どもが自分でできることを「やりたくない」「できない」「やって」と言うときは?諦めさせていいのかと迷います。

 

吉田さん:
それはむしろチャンスです。「自分でしたくない」には終わりがあるんですよ。いつも「抱っこ」という子でも、大抵は「歩く」と言いだし、いつか手を離して走って行ってしまう。私は子どもが6人いますが、子どもが7~8歳になると必ず“最後の抱っこ”を経験してきました。

 

だから私は、抱っこを求められたときは「大きくなったら、抱っこしないでとか言うんだもんね。今は、どんどん抱っこしてもらっていいんだよ」と伝えるようにしています。

 

ただ、子どもの「できない」を受け止めるためには、保護者の心の余裕が必要です。毎日5分でも、好きな音楽を聞いたり、映画を見たり、好きなものを食べたりと、自分の時間をつくること。

 

保護者は子どもたちの心のお天気や見える景色を決める大気や風のようなものですから、自分が心穏やかでいられるように工夫したいですね。