「一回一回の巡り合わせの新鮮さ」がこの旅の面白さ
── 初めて会う人と一定の期間を一緒に過ごす緊張感は想像できる気がします(笑)。それでも後半になるにつれてみんな慣れてくるのでしょうか?
平野さん:
慣れてくる場合と慣れない場合、どちらもありますね(笑)。私はみんなでご飯を食べるなど交流したいタイプなのですが、そのときに一緒にアルバイトをする人がそうとは限りません。
年齢も異なればバックボーンも性格も違うので、同じ事業者さんでも一緒にアルバイトをする人の個性によって「おてつたび」自体の印象も変わってくるように思います。
実際に、最初はワイワイできなくて寂しいなと思っていても、その人と一緒にいるうちにその人の個性が伝わってきたり、つき合い方が分かってきたり。年上の方だったら今まで経験されてきたいろんな話が聞けて勉強になったり。
それが良い、悪いということではなく、そういう一回一回の巡り合わせに新鮮さを感じている自分がいますし、それがおてつたびや旅の面白さであり、飽きない部分だなと感じています。
── 平野さんが「おてつたび」の体験を通じて得たものは何でしょうか
平野さん:
やっぱりいちばんは、何度でも行きたい地域が増えたということです。
いい意味でも悪い意味でも「リアル」な生活が旅を深くさせる
── 叱られたりコミュニケーションでストレスを感じたりすることもあったと伺いましたが、それを上回って何度でもサービスを利用したいと思う理由は何でしょうか。
平野さん:
今まで観光地を巡る旅をしているときは、どこの地域も当たり前ですが「ウェルカム」な雰囲気でいっぱいでした。でも、それだけで終わってしまう寂しさがありました。
おてつたびは、そこに「仕事」という責任をもってやらなくてはいけないことがある分、いい意味でも悪い意味でもそこでの生活がリアルだったんです。
その地域の文化や生活に自分が入り込まなきゃいけなくて、それは少し留学に似た感覚と言うか…。自分から行動しなきゃいけない部分、頑張らなきゃいけない部分も多い。
それがあるからこそ、出会った方との間に情も芽生えるし、地域に対する思い入れも強いんです。だからこそ、おてつたびを終えてお別れするときはやっぱりとても寂しい。見送りしてくれる事業者さんもずっと手を振ってくれていて。
そんな関係性が築けるのは、おてつたびならではかなと思います。普通の旅行ではまずないなと思います。
進路に悩んだときに出会った「柔軟で優しい視点」のサービス
── あらためて、平野さんにとっての「おてつたび」の魅力は何でしょうか。
平野さん:
旅を続けている中で、同時に就活も進めなきゃいけない時期があったんです。
そのときは「世間的にやらなきゃいけないこと」と「自分のやりたいこと」に大きなズレがあって悩んでいました。そんなときに「おてつたび」に出会って。
私のように、ひとつの場所に留まらずに全国を転々としたいという想いを持っている人はたくさんいると思うんです。「おてつたび」というサービスは、そういう人にも「何言ってるの?普通はこうでしょ」と偏見を持たずに、「そういう旅人が生産者側やサービス提供者側に回ることで、地域も旅人もwin-winになるんじゃない?」と言ってくれているような、柔軟で優しい視点でつくられたサービスに思えました。
そして、そんなおてつたびが広がった社会に期待をしたいと思い、今ではユーザーとしてだけでなく「おてつたび」でインターンをしています。
将来のことはまだ迷い中ですが、今は一番好きな旅を全力でやってみて、自分が好きなサイクリングやスポーツを通してさまざまな地域や人と交流を持ちたいと思っています。
そう思わせてくれたことがおてつたびの魅力です。
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「おてつたびが広がった社会に期待をしたい」という平野さんの言葉が印象的でした。
取材・文/渡部直子 写真提供/平野綾佳さん