東京の多摩エリアにある自然いっぱいの「高尾山さる園・野草園」 ではこの春、7頭の赤ちゃん猿が仲間入り。元気いっぱいの仲間たちをよそに、ボス猿のネッシンは何やら悩みを抱えている様子…?思わずクスッと笑ってしまうユニークなTwitterも話題のさる園園長の城定俊之さんにお話を聞きました。

ボス猿ネッシンの悩みの真相に迫る

── 公式Twitterで「ボス猿のネッシンは群れのことで悩み疲れているようです。周りにいる小猿たちネッシンのこと励ましてあげて」というツイートを拝見しました。赤ちゃんも増えたので、ボスは何かに悩んでいるのですか?

 

園長さん:
若いスタッフがこれをツイートしたのですが、う〜ん、人に言えない悩みもあるのかもしれませんね(笑)。今年は赤ちゃんが7頭生まれましたが、出産した母猿たちは、何かあれば守ってもらえるのをわかっていて、産後はみんなボスの近くに集まるんですよ。でもこれは毎年のこと。関東圏では4〜7月が猿の出産期ですから。

 

80頭をまとめるボス猿のネッシン
80頭をまとめるボス猿のネッシン

ただ、ネッシンは今27歳。人間でいえば80歳を過ぎているおじいちゃん猿です。猿の寿命を考えても、ネッシンが生きているのもあと2、3年でしょうか。たたずまいがおじいちゃんですし、動きもゆっくりなので、疲れているように見えるのは加齢が原因でしょうね。

 

でも、歳をとっていても、ボスはボスです。いざ猿同士のケンカが始まれば必ず現場に出向いてきます。群れの猿たちは、ネッシンの顔を見ただけで散らばってしまいます。

歳をとっていてもボスはボス!
歳をとっていてもボスはボス!

おそらく若い猿と1対1で戦ったら、ネッシンは勝てないでしょう。それでも80頭余りの群れから絶大な信頼を得ていて、20年近くボスの座にいます。野生の猿と違って守られた環境にいることもあって、うちは昔からどのボスも長期政権です(笑)。

 

── ボスはどうやって決まるのですか。ケンカが強い猿がボスになるわけではない?

 

園長さん:
ケンカが強ければボスになれるほど、猿の世界は単純ではありません。周囲からの信頼を得ていなければダメです。もちろん人間のように選挙や就任式があるわけではありませんから、前のボスが亡くなった後、しばらく経った頃に、いつの間にか周りに押し上げられる形でボスが決まります。

 

猿には序列があり、どちらの猿が上かを知るには、真ん中に食べ物を置けばすぐにわかる。たとえ相手が自分の母親であっても、目下の猿は目上の猿の食べ物を取ってはいけないんです。