SNSの炎上は他人事、ブラック職場はやり過ごすものと思っていませんか?

 

実は知識不足で、思わぬトラブルに巻き込まれたり、損をしてしまっているかもしれません。

 

ファッション業界に特化した事案を扱う弁護士の海老澤美幸さんに、現代社会で身につけておきたい法律知識について聞きました。

「息を吐くように」著作権侵害をしていないか

── SNSは現代社会に欠かせないツールになりました。利用するうえで、気をつけるべきことはありますか。

 

海老澤さん:
SNSで発信したり交流をするのは楽しいですよね。そのこと自体は本当に素晴らしいのですが、皆さんまるで息を吐くように著作権侵害をしているのが気になっています。

 

うっかり誰かの権利を侵害してトラブルに発展しないためにも、法的なルールをきちんと知ったうえで利用してほしいなと思います。

 

また、著作権侵害にあたりそうな行為をする場合でも、「著作権侵害にあたりそう」と知ってやるのと、知らずにやってしまうのとでは雲泥の差があります。

 

知っていれば、工夫したり、あらかじめ対策を考えておけますよね。そういう意味でも、基本のルールを知っておくことは重要だと思います。

 

── たとえばどんな行動が法律違反になりますか。

 

海老澤さん:
多くの人がInstagramやTwitterで、他人が撮ったアイドルなどの推し画像のスクショをアップしていますよね。あれは実は写真の著作権や推しの肖像権を侵害する可能性の高い行為です。

 

著作権とは、写真やイラストなどの作品を創作した人が、その作品を自由に使ったり、他人に「使っていいよ」と言える権利のこと。肖像権は、被写体が持っている権利で、自分の姿かたちを勝手に撮影されたり利用されない権利です。

 

1枚の写真には、その写真を撮った人の著作権と、撮られた人の肖像権という別々に権利が同時に発生しているわけです。

 

ややこしいのですが、その写真を自由に使うことができるのは著作権を持っている撮影者だけ。撮られた人はその写真を自由に使うことはできません。そのため、撮られた人がその写真を使うためには撮影者の許可が必要です。

 

撮られた人は何も言えないかというとそんなことはなくて、肖像権に基づいて「自分が写った写真を勝手に使わないで」と言えるわけですね。そのため、撮影者が自分の写真を使うためには、撮られた人の許可が必要ということになります。

 

── ファンが自分のSNSアイコンに、他人が創作した推しの写真や画像を小さく使うのはどうでしょう。営利目的ではなくてもダメなのでしょうか?

 

海老澤さん:
たとえば推しの写真をスマホのロック画面に使って個人で楽しむ程度はいいのですが、多くの人目に触れるSNSのアイコンに使うのは、著作権・肖像権の侵害になる可能性が高いかと思います。

 

「推しを愛でているから」「応援しているから」と見過ごされたり正当化されがちですが、そうした気持ちや、営利目的であるかどうかなどは関係ありません。

 

もちろん、事務所や公式サイトが拡散を前提として配布したアイコンなどは、事務所や公式サイトが許可する範囲であれば使ってもかまいません。事務所などが出しているガイドラインを確認しておくといいと思います。たとえばスタジオジブリは、“常識の”範囲内での使用に限って利用できる画像を公開してますよね。

 

応援のために拡散したい場合は、アーティスト本人や番組公式アカウントがあげたものを、SNSの仕様に従ってリツイートしたりシェアするのがいいでしょう。また、元の投稿のURLを貼るのも問題ありません。