「最初は全然ウケなかったんですよ!」。高齢者施設でお笑いを披露した芸人・メイミさんは、そこで火がつきます。“誰だって笑いはエネルギー源になる!”気づけば全国の施設を回り、介護福祉士の資格も取得。猪突猛進するメイミさんってどんな人なのでしょうか(全2回中の1回)。
高齢者施設に訪問するも「まったくウケなかった」
介護福祉芸人・漫談家として数々の講演や寄席の舞台に立ち、高齢者施設訪問を続けるメイミさん。幼い頃は控えめで物静か、人前に出ることを好む性格ではなかったそう。
相手の顔色をうかがう子どもだったことが「相手を笑わせて、笑顔にしたい」という気持ちに結びついたのではと本人は分析します。
20歳のとき、偶然、お笑いライブを手伝ったことがきっかけで、メイミさんはお笑いの世界に足を踏み入れました。
やがてオーディションを経てホリプロで芸人として活動するなか、ある先輩芸人に誘われ、高齢者施設で芸を披露しました。
「私がひとり芝居をしながら『鈴木さん!』と台詞を発すると、客席からひとりのおじいさんが『はーい!』と手を挙げて舞台に出て来られたんです。
本当に鈴木さんという苗字で、本人は自分が呼ばれたと勘違いされたみたいで。舞台と客席が入り混じった様子に、会場は温かい笑いに包まれました」
それまでメイミさんにとって一般向けのお笑いライブは、「笑わせる側」と「笑う側」が二分されるものでした。
でも、この「鈴木さん!」事件をきっかけに、高齢者とともにもっと演者と客席の枠を超えて、皆が笑いの輪の中に入りこめる場をつくりたいと考えはじめました。
さっそく、ひとりで高齢者施設の訪問をして持ちネタを披露してみましたが…。
「それがびっくりするほど、ウケなかったんです。お笑いライブで当時流行っていたフリップ芸やあるあるネタをやったのですが…。
高齢者のことを考えてつくったネタでないものを、そのまま押しつけてしまいました。しかもシュールな芸風で、気を悪くされた方がいたかも」
この経験にショックを受け、メイミさんは高齢者にウケる笑いを本格的に研究し始めました。
目指すのは、高齢者とともに「客席と自分が一体となる笑い」「演じる側と観る側の間に垣根を感じさせない笑い」。
同時に、高齢者をもっと理解し寄り添いたいと、介護の資格をとり介護施設で働き始めました。