「味変した?」ビールが味わい深くなる注ぎ方

── 家だと缶のまま飲むときもありますが、グラスに注いだほうが美味しく飲めますか?

 

くっくさん:
グイッと勢いよく飲みたいならそれもありですが、美味しく飲むなら話は別です!

 

缶ビールは、注がれた状態で飲むことを想定していて、強めに圧がかかっている場合が多いです。そのまま飲むと、炭酸を強く感じすぎてしまいます。

 

加えて缶は、飲み口がすごく小さいじゃないですか。その分、香りや味わいを感じ取りづらいので、特にクラフトビールなどの場合、魅力的な個性を楽しめません。

 

人によっては、鉄っぽく感じるなど、缶から来る香りを一緒に感じてしまうこともあります。

 

香りと味はリンクするので、鼻をつまんで食べ物を食べると美味しくないといわれているように、液体の味わいも感じにくくなっちゃうんですね。グラスに注いだほうが見た目も楽しめますよ。

 

── 後で洗うのが面倒に感じても、グラスに注いだほうがビール本来の味わいを堪能できるということですね。もしかして注ぎ方にもコツが?

 

くっくさん:
そうですね。注ぎ方でも味わいは変わってきますね。40~50種類くらいの注ぎ分けをしているお店もあるくらいです。

 

そこで、私が実践している「ビール本来の味わいを楽しむ注ぎ方」を紹介します!

 

1.瓶または缶を、振動をなるべく与えないようにそっと開栓します。利き手でビールを、逆の手でグラスの下のほうを持ちます。

 

2.グラスをビールの方へ45度傾けます。

 

3.手首を外側(または内側)に45度ひねり、グラスの口を正面に向けます。

 

4.グラスの側面をぐるぐると伝わせるイメージで、グラスに注ぎます。

 

5.泡がこぼれる手前でグラスを立て、注ぎきってください。

 

通常のビールの注ぎ方だと、注がれたときに空気を巻き込みやすく、衝撃が加わりやすい。そこで私が推奨しているのは、「手前や奥に45度ひねる」という動作。

 

どうなるかというと、液体がグラスの側面に対して螺旋を描きながら下に落ちていく感じでまわっていきます。

 

直接、底に当たるのではなく、グラスの側面を伝わりながら下に落ちていくので、その分、衝撃がやわらぐ注ぎ方です。適度に泡をつくりながらやさしく注ぐことができます。

 

ダメな注ぎ方は基本的にはないのですが、あえて言うなら「自分に合っていない注ぎ方」でしょうか。

 

喉ごしを楽しみたいのに激しく泡立つほど勢いよく注いで炭酸を飛ばしたり、香りや味わいを楽しみたいのにやさしく注ぎすぎて香りが開かなかったり…。

 

自分が飲みたい味になっていればOKなので、注ぎ方を知っていると、家での楽しみ方は変わってきますよ!

 

PROFILE くっくショーヘイさん

ビアソムリエ・ビアジャーナリスト。5000種以上のビールをテイスティング。「ビアジャーナリストアカデミー」などで講師を務めるほか、日本地ビール協会公認「シニア・ビアジャッジ」として国際ビアコンペでの審査も行う。最新刊は『うまいビールが飲みたい!』(リトルモア)。

取材・文/高田愛子 画像出典(サムネイル画像を除く)/『うまいビールが飲みたい! 最高の一杯を見つけるためのメソッド』