保護者には「子どもの学ぶ環境」をデザインする責任がある
今の学校は、国民の要望もあって昔ながらの一律一斉の教育ではなく、個の学びや探究を大切にするようになり、学ぶ姿勢を育てるのは家庭側の役割とされています。もし、ご相談者様がそのことを理解されていれば、今回のような悩みは生じなかったかもしれません。
とはいえ、国の広報のやり方に問題があり、子どもの教育に関して家庭側の役割が重くなっていることが国から家庭側へ周知徹底できていないのが現状です。ご相談者様に限らず、2020年度から学習指導要領が変わったことは何となく知っていても、真剣に子どもの学びに向き合えている保護者はそう多くありません。
とくに都市部は中学受験者が多く、塾など学校外で学び方を習得している一方、受験をしない子のなかには学び方がまったく身に付いていない子もいて、先生たちもどこまで踏み込んでそこを教えるべきか距離感を測るのが難しいのではないかと思います。
つまり、誰が子どもたちに勉強を教えるのかというコンセンサスが、都市部であればあるほど家庭と先生の間で取れていないのです。保護者は何でもかんでも学校任せにせず、子どもの学ぶ環境をデザインする責任が自分たちにある時代なのだと自覚する必要があります。
おじいちゃんやおばあちゃんと、あるいは夫婦の間で子育てについて会話があるご家庭では、「昔と時代が違うんだね」と教育の現状に気づきやすいのですが、目の前の子育てに追われているとなかなかその変化に気づけません。
忙しく余裕を失っている共働き世帯は多く、コロナ禍の影響もあるため悩ましいのですが、どうかもう一歩踏み込んでお子さんの教育に向き合っていただきたいと感じます。今回の記事を読んで、「そんなこと言われても…」と戸惑いや不快感すら覚える方もいらっしゃるとは思います。それでも、各ご家庭が教育において何を大事にするのか、お子さんの学びの環境をどうデザインしていくのかといったことをご家族で話し合うきっかけにしていただけるとうれしいです。
PROFILE 小川大介さん
教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。
取材・構成/佐藤ちひろ