「刑務所のなかにファッションブランドを立ち上げよう」と、産官学が連携した日本初のプロジェクト「みとびらプロジェクト」について紹介しました。今回は、みとびらが展開するファッションブランド「NIJIMU(にじむ)」について、一般社団法人みとびらの理事である山部千明(やまべ・ちあき)さんにお話を伺いました。

刑務所と社会を変えるファッションブランド「NIJIMU」の特徴とは

── 刑務所の中のファッションブランド「NIJIMU(にじむ)」の特徴について教えていただけますでしょうか。

 

山部さん:
はい。「NIJIMU」は、東京藝術大学美術学部のDOOR(※)を受講したメンバーで立ち上げた、一般社団法人みとびらが展開するファッションブランドです。

(※東京藝術大学が進める、「アートと福祉」をテーマに社会人と藝大生が一緒に学ぶ学習プログラムDiversity on the Arts Projectの略)

 

「NIJIMU」の大きな特徴は、産(アパレル産業)官(法務省矯正局)学(東京藝術大学DOOR)が連携して立ち上ったファッションブランドであることです。

 

他にも「素材」「デザイン」「作り手」に大きな特徴があります。まず、素材には日本の倉庫などに眠っている使い道がなくなった生地残反や、行き場を失った着物を使用しています。特に着物地は芸術作品としても捉え直し、現代のライフスタイルに合うサステナブルファッションになっています。

着物地を使ったみとびらのデザイン

デザインにおいては、ジェンダレス・エイジレスにこだわり、年齢・性別・体型を気にせずに誰でも着ることができるデザインを意識しています。

 

また作り手は、山口県美祢市にある刑務所・美弥社会復帰促進センターに服役する、立ち直りの意識を持った若年受刑者がプロの縫製指導を受けて制作しています。

「境界線をにじませたい」NIJIMUに込めた想い

── 「NIJIMU」というブランド名に込められた想いを教えていただけますでしょうか。

 

山部さん:
まず背景として、DOORの講師や受講生には、多様な社会的な課題を抱えている人や、それに取り組んでる人たちがたくさんいました。

 

受講するなかで、たとえば「加害者」と自分、「被害者」と自分、「障がい者」と自分など、さまざまな人たちとの間に何となくあった境界線が、徐々に曖昧になっていったんです。自分たちの価値観が変わってきていると感じました。

 

そんなときに、東京藝術大学の学長である日比野先生の「SDGsで何かをやるときに、そのSDGsの17のゴールのなかに芸術という項目はないんだけれども、その17の項目をすべて繋げて根底から支える存在が芸術でアートなんだ」という言葉が心にすっと入ってきたんです。

 

様々な社会課題やそこにある境界線を滲ませながら、つないでいくのがアートなんだと理解しました。

 

「NIJIMU」を立ち上げコンセプトを話し合っていくなかで、私たちはその境界線を「アートとファッション」で滲ませていきたいという想いを込めて、「NIJIMU」というブランド名にしました。