「男子厨房に入らず」はもはや死語、男子も女子も台所に立つのは当たり前な時代。ですが、わが家の最高齢男子(80代)は最近、厨房でひんしゅくを買っているようで…?

「ごまがない!」消えた食材のゆくえ

ある日の夕刻、義母が夕飯の支度をしてくれていたときのことです。

 

「炒りごまがないんだけど、サカヱさん知らない?」と聞かれました。

 

わが家の台所は何人もの料理担当がいるので、調味料やよく使う乾物などはだいたいの置き場所が何となく決まっています。カレールウはここ、粉類はこの引き出し、調味料の買い置きはこの棚…といったふう。

 

義母の探している炒りごまも決まった場所があるのですが、どうしても見つからないと言うのです。

 

「えー、この前私が買ってきたばっかりですよ」と言いながら、私も炒りごま捜索に加わったのですが、普段この辺に置くはず、と思われる場所を手当たり次第探しても、どうしても見つかりません。

 

もう買いに行くしかない?でも時間も遅いし…と諦めきれずに台所を二人でゴソゴソとしていたとき、ふと見上げた私の視線の先、普段は使わない台所の高い棚の上の、大きな密閉容器が目に入りました。

 

その中にうっすらと透けて見える「ごま」の文字。

 

「お義母さん、ありました!あの棚の上のところ!」

「…ええ?なんであんなところに…?」

 

二人で困惑しながら、踏み台を使って棚の上の密閉容器をとり、蓋を開けると、中から出てきたのは探していたごま、それから鶏がらスープ、塩昆布など、普段よく使うものばかり。

 

「あっ、そういえば昨日息子くんが鶏がらスープの素がないってずっと探してて、見つからないって諦めてたわ」

「私もこの前、使いかけの塩昆布がどうしても見つからなくて、仕方なく買い置きのやつを開けました…」

 

目を見合わせた嫁姑。心当たりは一人しかいません。