ケニアに行ってお寿司や茶道に関心を持つように
海外の人たちにとって、日本の文化はとても魅力的に見えていることも駐在生活のなかで発見したことのひとつです。
「海外にいるときのほうが日本文化に触れる機会が多い気がします。 “次のバザーでお寿司を握ってほしい”と頼まれたことも。
日本人だったら日本食はなんでも作れるし、日本文化に精通していて当然だと思われていたんです。
実は本格的なお寿司ではなく、海苔巻きを指していたのですが、日本に住んでいると、海苔巻きだって自分ではあまり作らないですよね。
私は日本文化について何も知らないと感じ、ケニアでは駐在先で日本人の先生を見つけ、茶道を始めました。長女は日舞を習い、今では名取です。
もしずっと日本に住んでいたら、茶道も日舞も縁がなかったと思います」

帰国したら日本のいいところを吸収しようと考えていたのにも関わらず、日本に戻ったとたん、何が魅力的だったのか一瞬でわからなくなったとのこと。
「私を含め、日本人は自国のよさを見つけたり、誇りを表現したりするのがあまり上手ではない気がします。みずからの文化の魅力に気づくには、どうしたらいいのかなと思います」
駐在生活のなかで、積極的に行動して居心地のいい生活を送ってきた伊藤さん。文化の異なる国で楽しく過ごすコツはどんなことでしょうか。
「その国に敬意を抱くこと、口に合う食べ物とおいしいお酒を探すこと、自分にとって美しいと思える場所を探すこと、日本と比べないことだと思います。
おそらく今後も駐在生活は続きます。すでに夫がモンゴルに赴任しているので、今年の秋くらいから合流する予定です。
これまでの経験を、今後どう生かしていくかは次の駐在から帰国してからじっくり考えたいと思います」
※上記は、伊藤美穂さん個人の経験談・感想です。
取材・文/齋田多恵 写真提供/伊藤美穂さん