「思ったことを書け」は大人の押しつけ
「自由に思ったことを書いていい」と言われるのも、子どもにとってはとても嫌なこと。子どもが考えを想像できるまでの下準備を大人が手伝っていない状態で、「何かを思え」とただ押しつけられる子どもの側に立てば、いかに嫌なものかは想像できますよね。これでは国語が嫌いになるのも当然です。
人は、聞いたり読んだりする経験があって初めて、話せるし、書けるのです。現在、文章を読み取っていく部分についてお子さんが乗り気でないなら、その先の「書く」も当然ハードルが高いものになっています。そこを理解してあげたうえで、まずは「口に出す」ことから始めてください。
低学年なら、まずは親御さんが読み聞かせをしてあげるところから始めるといいでしょう。文字を単に音として発するのではなく、言葉の固まりを意識し、会話文も声のメリハリを変えるなど、内容が響いてくるように読んで聞かせてあげると、お子さんにとっても「わかる」感覚を渡すことができます。
そして、その後に「あなたも読んでごらん」と音読を促し、その後に、読んだ内容について親子でおしゃべりしてみるといったステップを踏んでいけると理想的です。
たとえば、もしそのおしゃべりのなかで「主人公は寂しそうな気がする」と言えたなら、「今言ったことをそのまま書けば大丈夫だよ」と、書くことに導いてあげる。そうすると、だんだん文章で表現ができるようになっていき、作文への苦手意識も軽減されていくと思います。
昔は漢字の練習をして教科書を読んで終わり、といった授業が多く、今のように小学1年生で読解力や作文の力を求められることはありませんでした。だから、今の親御さんはサポートが大変かと思います。
しかし、現に学習指導要領で要求されている内容の難易度が上がっている以上、大人たちが学びへの寄り添い方をアップデートしていかなければなりません。今回のサポート策も、そんな現実を踏まえながら参考にしていただければと思います。
PROFILE 小川大介さん
教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。
取材・構成/佐藤ちひろ