マンホールの下の世界をもっと知って欲しい!

—— いま、主に観光の目的で全国に広がっているデザインマンホールですが、そもそもは下水道事業のPRだったと思うのですが…?

 

村仲さん:

その通りです。地方公共団体としては、話題になるデザインマンホールがあれば、観光が活性化するというメリットがあります。ただ一番の目的は、下水道事業を市民にPRするためです。

マンホールカードの発行はGKPの活動のひとつ
マンホールカードの発行はGKPの活動のひとつ

下水道事業って、日常生活からは見えない部分がほとんどなので、なかなか人々に興味や関心を持たれにくい。下水道といえば、「汚い・臭い・暗い」の3Kのイメージが強いですし、下水道工事をしていると嫌がられることもあります。でも、私たちの生活は、下水道がきちんと整備されているからこそ成り立っているものなんです。

 

—— 地震などの災害のときに水道が止まって困ることはありますが、普段は特に下水道について意識して生活していません。私たちは具体的にどのような恩恵を受けているのでしょうか?

 

村仲さん:

マンホールの下には下水道管があり、家庭から出た汚水を下水処理場に運んでいます。そこで汚水を浄化してから川や海に放流することで、地球環境を守っています。下水道のおかげで私たちはキレイな環境で毎日暮らすことができているのです。

 

たとえば東京は今、下水道の普及率が100%です。昔に比べて川や海もキレイになり、東京の川でも魚が泳ぎ、汚臭もしなくなりました。

 

かつて隅田川は「死の川」と呼ばれていました。汚臭が酷いので、隅田川の上を電車で通るとき、乗客は窓を閉めたくらいです。綺麗な水にしか住まない鮎が近年、神田川や多摩川で見られるようになったのも下水道のおかげなんです。

日本下水道協会主催「下水道展」で下水道について学ぶ子どもたち
日本下水道協会主催「下水道展」で下水道について学ぶ子どもたち

—— 下水道はすごい役割を担っているんですね。たびたび工事をしているイメージがあったので、東京の下水道の普及率が100%だと聞いて意外でした。

 

村仲さん:

下水道が100%普及したとしても、下水道施設の老朽化に伴うリニューアルのために工事が必要です。日本全国の下水道管をつなげると約46万キロあります。その耐用年数は50年ですが、汚水量の多い都心では10〜20年で取り換えないといけない場合もあります。老朽化した下水道管が原因で発生する道路陥没は全国で年間2000件近く発生していますので、早急な対応が必要です。そのために、下水道の関係者は昼夜を問わず下水道がきちんと動くように維持管理しているんです。

 

また、東京は下水道普及率100%ですが、全国で見るとまだ普及率は80%です。下水道の恩恵を受けられていない地域がたくさんありますので、年間を通して、全国的に工事は必要不可欠なんです。

 

マンホールって、私たちが下水道について思いを馳せることのできる最も身近な存在だと思います。デザインマンホールを通して、マンホールの先にある下水道が私たちの生活を支えていること、そして地球環境を守っていることを、ぜひ思い出してもらえたら嬉しいですね。

取材・文/酒井明子