日本全国に広がりつつあるカラフルで鮮やかなデザインのマンホール。見たことありませんか?まさにマンホールブームの到来。その気になる背景について、下水道事業に関わるボランティア組織「GKP(下水道広報プラットホーム)」に所属する日本水道新聞社の村仲英俊さんに話を伺いました。
「ポケふた」も「ガンダムマンホール」も全国展開中
—— 最近、日本各地で、かわいくてカラフルなデザインマンホールをたくさん見かけるようになりました。いつの間にマンホールブームが到来していたのでしょうか?
村仲さん:
おっしゃる通り、「マンホールブームが到来した」と言っても過言ではないと思います。
実はデザインマンホール自体は40年以上前からあります。初めてデザインマンホールが登場したのは、昭和52年で、沖縄県那覇市のマンホールです。「ガーラ」という名前で、沖縄で親しまれているアジをあしらったデザインでした。
当時の建設省(現・国土交通省)下水道部の担当者がこれに関心を持って、マンホールのメーカーに「下水道事業の市民PRのためにマンホール蓋にデザインを施して」と言ったのが、デザインマンホールが広がるきっかけです。
その後、全国各地で地元の観光名所や草花、動物、キャラクターをモチーフにしたカラーマンホールが作られるようになりました。昭和50年代後半ごろだったと聞いています。
—— 今や、マンホールの蓋マニアの「マンホーラー」と呼ばれる方もいらっしゃるとか。
村仲さん:
そうです。マンホーラーの方が全国を旅して蓋の写真を撮影し、ブログにアップしたり、写真集を出したり、テレビに出演するなかで徐々に多くの人々にマンホールの魅力が広まっていきました。
数多いマンホーラーのなかでも、前述した方々は尊敬の念をこめて「レジェンド・マンホーラー」と呼ばれています。
SNSの普及によって、デザインマンホールへの注目度が高まり、アニメやゲームのキャラクターのデザインの登場で、その人気の高まりに拍車がかかっている状況です。
GKP主催で全国各地を会場にして毎年開催している、マンホーラーたちの祭典「マンホールサミット」というイベントがあります。今まで9回行われてきたのですが、第8回目の2018年のサミット「マンホールサミットin北九州」は過去最多の5000人が集まりました。
最近はコロナ禍で中止になっていたのですが、今年11月には、3年ぶりにマンホールサミットが所沢で開催されます。どのくらいのマンホーラーが集まるか今から楽しみですね。
—— それほどまでにマンホールが人気になっていたとは知りませんでした!
村仲さん:
マンホーラーではない一般の方々のなかには、2019年にポケモンがデザインされたマンホール蓋「ポケふた」が登場して話題になってからデザインマンホールを知ったという方も多いのではないでしょうか。
なんせ、マンホールは下を見て歩かないと気付きませんから(笑)。今では「ポケふた」は全国200か所以上に設置されているそうです。
最近は「ガンダムマンホール」も話題です。バンダイナムコグループが立ち上げた「ガンダムマンホールプロジェクト」は、全国にガンダムマンホールを設置し、自治体と協力し、国内の活性化を目的としています。
すでに北海道の稚内市、豊富町、天塩町と、神奈川県の小田原市、相模原市には設置済みで、7月中旬頃には栃木県壬生町に設置されます。
—— 現在、どのくらいの数がデザインマンホールになっているのですか?
村仲さん:
下水道のマンホールは日本全国に1600万基ほどあると言われていますが、ほとんどが皆さんがよく目にする放射状の幾何学模様が入った「JIS型」と呼ばれるものです。デザインマンホールは年々増えつつありますが、まだ全体の9割9分がJIS型だと思います。
デザインマンホールの多くは「人が集まりやすい歩道」に設置されています。多くのデザインマンホールは地方公共団体が管理していることもあり、デザインはその土地の風景、特産、出身の有名人、ゆるキャラなど「ご当地もの」が描かれています。
つまり、観光目的で設置されることが多いので、主に、駅前や商店街など、人の目につく場所にあるようです。