「騙されるかも」という意識が重要

—— 毎日、膨大な量の情報が飛び交っています。それらすべてを見極めるのはとても骨が折れます。

 

小木曽さん:

おっしゃる通り、すべてを見極めようとしたら時間も労力もかかります。そして、それを完全に実現しようとしたら、すべての分野の専門家になる必要があるのです。現実的には不可能でしょう。

 

つまり見極めることができない情報もたくさんあるということ。「私たちは知らないことの方が多く、自分で判断できる場面は意外と少ないのだ」と、常日頃から自覚しておくことが大切なのです。これが、フェイクニュースに騙されないための第一歩となります。

 

言い換えると、これは「自分は騙されるかもしれない」という心構えです。私は大丈夫、騙されないと思っている人ほど、騙されやすいもの。「騙されるかも」と用心することこそが、究極の防衛策だと思います。

小木曽先生の講演の様子
小木曽先生の講演の様子

—— 周りの人がフェイクニュースを信じていたら、どうしたらいいですか?

 

小木曽さん:

その相手が身近な子どもなら、客観的な証拠や、フェイクと判断できる根拠を示してあげてよいと思います。ただし、そのフェイクニュースの情報源がその子の「保護者」だった場合は諦めたほうがいいかもしれません。その保護者の考えを尊重するしかありません。こじれれば、その保護者との大きなトラブルに発展しかねませんから。

 

つまり、相手が大人だった場合は難しいということです。もしフェイクニュースであることを論理的に伝えても、その人が信じたい理由との戦いにしかならず、何も得られない可能性が高いでしょう。

 

SNSが普及した現代は、私たち一人ひとりが影響力を持った「メディア」であると言えます。つまり情報を発信する際には、それなりの「覚悟」が求められるのです。

 

 一人ひとりが「フェイクニュースのの防波堤」となり、正しい情報か判断できない場合はむやみに拡散させず、いったんその情報に対する判断を保留する「保留力」を鍛えることで、悪意のある嘘やくだらないデマが広がりにくい社会をつくり出せると考えています。

 

PROFILE 小木曽健さん

国際大学GLOCOM客員研究員。講演やメディア出演などを通じて「ネットで絶対に失敗しない方法」を伝えている。全国の企業・学校等で40万人、2000回以上の講演実績。『ネットで勝つ情報リテラシー』(ちくま新書)など、フェイクニュースに関する著書も多数。

取材・文/酒井明子