ネットやテレビからは、たくさんの情報が毎日流れてきます。なかには同じ情報なのに結論が反対のもの、これって本当なの?と思う情報も。正しい情報と嘘の情報を、私たちはどのように見分ければ良いのでしょうか?国際大学GLOCOM客員研究員の小木曽健さんに伺いました。
「誰が得をして誰が損をするか」考えてみよう
—— フェイクニュースとはどのようなものですか?
小木曽さん:
フェイクニュースは大きく2種類に分けることができます。ひとつは、悪意をもって意図的に作られたウソの情報(=偽情報)、もうひとつは、悪意がなく勘違いや誤解などで広まった間違った情報(=誤情報)です。
たとえば愉快犯による「富士山が噴火した!」というSNS投稿は、悪意を持ってわざと発信されている「偽情報」でしょう。いっぽうで、富士山は過去に何度も噴火した事実があり、その情報が伝言ゲームで拡散するうち、いつの間にか「何月何日に噴火するらしい」という間違った情報に変化してしまったら…これは悪意のない「誤情報」になります。いずれもフェイクニュースです。
またフェイクニュースは、その情報が「誰かに伝えたい」と感じる内容だったり、「〜だったら良いな」という人々の願望だったりした場合に、爆発的に拡散する特性を持っています。情報の前では、人間は理性よりも感情を優先してしまうのです。
—— 悪意がない場合は別として、人はなぜ意図的にフェイクニュースを流そうとするのでしょうか?
小木曽さん:
そのフェイクニュースによって利益を得「たい」、拡散する様子を眺め「たい」、自分の願いを事実だと思い「たい」。理由はさまざまですが、「〜したい」という発信者の願望が存在するからです。つまり、ウソ、偽情報には明確な目的があると言えるでしょう。
—— フェイクニュースの目的を見分ける方法はありますか?
小木曽さん:
情報に接したとき、この情報で「誰が得をするか」「誰が損をするか」という視点で眺めてみると、その情報を誰がなぜ発信したのか、どれくらい信用できるのか、少し見えやすくなります。
また、人は情報の真偽を判断するとき、「客観的な根拠」よりも、その情報を「好きか嫌いか」で決めてしまう傾向があります。自分が「こうなったらいいのに」と思う情報を無意識のうちに信じてしまい、あとからその情報が正しいと思える根拠を探し始めるのです。大切なのは、人間にはそういった特性がある、ということを常に意識することです。
—— ニュースが真実かどうか、「情報源を確認する」というのも重要でしょうか。
小木曽さん:
もちろん、「情報源」は真偽を確認するための要素のひとつですが、同時にその情報源が果たして本当に信頼できるものなのか、この確認も重要です。
たとえば「国連」から発信された情報に対しては、比較的多くの人が信頼する傾向にありますが、ひと言で「国連」と言っても、実は様々な考え、異なる立場を持った組織の集合体です。過去にはある国連組織が、フェイクニュースの発信源となってしまったこともありました。
—— 受け手の情報リテラシーが求められそうです。他にも注意すべき点はありますか?
小木曽さん:
SNSやニュースにおいて「不安の声が」とか「多くの日本人は許さない」などの表現を見かけることがありますが、これは情報ではなく「感想」「発信者の意見」です。こういった表現は受け手の感情を揺さぶり、拡散も期待できますが、「事実」と「意見」を混在させるのは、フェイクニュースの特徴でもあるので、これらの単語を目にした際には注意しましょう。